さめない偏愛! 映画「男たちの挽歌」シリーズが大好きだ!

ある日突然、怖い王様に
「オマエ島流し。無人島何も無い。でも映画のDVD5本だけ。持って行っていいよ~。」
と、理不尽で残酷でちょっと優しいことを言い渡されてしまったならば!我、いったい何を選ぶべきか?…と、世界中のすべての映画ファンが1日に1度、寝る前に必ず考える。

そんな時、私には迷わず選ぶ作品がある。
香港映画「男たちの挽歌」だ。

これだけは、はずせない!
あの勇壮なテーマを聞いただけで、スイッチを押されたみたいにカーッ!と血液沸騰。
劇中繰り返し流れるレスリー・チェンの主題歌のインストバージョンを聞けばホロホロと涙。
時々、あの英雄たちにたまらなく会いたくなり、何度でもDVDを再生してしまう。
これはもう恋だ!さめない愛だ!

出会いは友人の紹介。
ドンヨリした高校時代のある日。ドンヨリメイトのB君が
「いや~!昨日借りた『男たちの挽歌』っていう映画、凄かったよ!バリかっこええよ!」
と、大興奮で激オシしてきたのである。

しかしB君には、以前だまされたことがあった。
ある日、彼が
「いや~!昨日借りた『ベティ・ブルー』っていう映画凄かったよ!エロ映画よ!バリエロいよ!」
と大興奮で激オシ。
しかし私はキッパリと拒否。
「そんなエロ映画とかAVばっかり観ずに、たまにはフェリーニやタルコフスキーっていう監督の作品も観たほうがいいよ。若い内にね。芸術作品に触れて感性を磨かないとダメだよ。」と説教。

放課後、さっそく「ベティー・ブルー」なる映画をレンタル。
チャリで激走。家までずっと勃ちこぎ。
部屋にカギをかけ、ビデオをガチョンとセット!
テレビの前でパンツを下ろして映画が始まるのを待った。

ヒステリー気味の女が情欲におぼれ、ブスブス刃物で人を切りつけ、ゴウ!と火を放ち、精神のバランスを完全に崩して自分の目をくり抜き、恋人に枕で窒息死させられる…というようなナニもかも縮み上がる物語が繰り広げられた。
上映終了後、私は無言でビデオを取り出しパンツをはいた…

かくの如き経緯があったため、今回も半信半疑。
Bくんオススメの「男たちの挽歌」を借りてきて、あまり期待せずに再生。
しかし…Bくんは正しかった!
「男たちの挽歌」はバリかっこよかった!しびれた!泣いた!まいった!
チョウ・ユンファの他の出演作も観まくった。 写真集も買った。
ユンファが映画の中で着ていたような黒いロングコートも購入&装着。Bくんに自慢。
「変質者みたい」と言われ顔がナナメによじれるようなツカミ合いのケンカに。
以来、今もこの作品の虜である。

ちなみにレンタル屋さんに行くと、「愛と復讐の挽歌」「狼 男たちの挽歌・最終章」「ハード・ボイルド 新・男たちの挽歌」など、似たようなタイトルの作品や、韓国でリメイクされた同名の作品が並んでいて、ややこしいことになっている。

しかし正統なシリーズは3作品のみ。
順番に紹介させて頂きたい…が、私は繰り返し観たと言っても、Ⅰはせいぜい300回ぐらい、Ⅱにいたっては500回ぐらいしか観てない。
熱狂的なファンが多いこのシリーズについて書く資格があるのか微妙なところだが、少しでも興味を持って頂ければ幸いである。

男たちの挽歌

男たちの挽歌

記念すべき第1作。
フェリーニの「8 1/2」やタルコフスキーの「サクリファイス」とも並んで映画史にその名を刻む、永遠不滅の金字塔。

「8 1/2」は何か難しそうだから観たことないし、「サクリファイス」は何か難しそうだから観たことないのでよく知らないが、「男たちの挽歌」のストーリーはいたってシンプル。
ホー(ティ・ロン)とキット(レスリー・チェン)は仲良し兄弟。しかしホーはヤクザ。キットはそのことを知らぬまま警官となる。
ホーは、おのれの極道稼業のせいで父親を死なせてしまい、そのことでキットから激しく憎まれショボン!
そこにホーの親友のマーク(チョウ・ユンファ)も絡んでスッタモンダ。撃って撃たれて撃ちまくって…というお話。

やはり何度観ても泣いてしまう。
ホーが、落ちぶれたマークと再会するシーン。嗚咽をこらえ手を差し出すマーク。強く抱き合う2人。
少年少女合唱団のステージ横で、キットの恋人に伝言を残し、寂しく微笑んで立ち去るホー。
「過去はもう充分つぐなったぞ!なぜ許さない?」とキットに激しく詰め寄るマーク。
そしてラスト、血と涙に濡れたキットの髪を優しくなでるホー…
続いて流れるレスリー・チェンの歌うエンディング…
もうこの時には涙で顔面カピカピである。

どの役者さんも最高だが、やはり特に、この作品のチョウ・ユンファの演技は本当に素晴らしい。
映画を観ていて「役者さんって凄いな…」と思う瞬間がある。
私にとっては、「七人の侍」「用心棒」「椿三十郎」の三船敏郎。「ヤングガン」のエミリオ・エステベス。
そして「男たちの挽歌」のチョウ・ユンファだ。

何と言うか…動きが固くない。柔らかく伸びやかなのだ。
おどけて指でホッペタをポンッと鳴らし、札束を燃やしてタバコに火をつけるユンファに、開幕早々、誰もが魅了されるだろう。

そして何と言っても、もはや伝説。「風林閣襲撃シーン」である。
地球上のすべての男子が「いつの日か友の復讐のため、2丁拳銃を携え、死を賭して単身敵地へ殴りこみをかけたい」と願う。ユンファは見事に男の夢を見せてくれた。
お姉ちゃんのお尻をウヘヘと触りながら鉢植えの中に拳銃を隠していく。敵が宴会を開いている目的の部屋にたどり着き、ガラリと厳しい表情に変わる。そして静かにドアを開け、必殺の2丁拳銃乱射!
撃ちつくした拳銃を投げ捨て、部屋を立ち去り、ビシッ!とロングコートの襟を直す。この「ビシッ!」がたまらん!
続いて追いすがる敵たちを、抜かりなく鉢植えに隠しておいた拳銃で皆殺し!
マッチをくわえて、ロングコートをユラユラさせながら悠然と立ち去る…
これを観てユンファに惚れない男はどうかしている!女性のあなたもジュン!と来ること間違いなしだ!

ちなみに名演技と言えば、監督のジョン・ウーと製作のツイ・ハークも出演。
ウー先生は「特に何もしないが、何かすべてを悟った顔で主人公たちを見つめ続ける刑事…」の役。
ツイ・ハークは「オーディション会場でキットの恋人の演奏を冷笑し、車の窓ガラスを叩き割られる嫌な審査員」の役でそれぞれプチ名演を披露なさっていました。

そしてちなみに、当時出ていたVHSジャケットの裏には ↓

 

…という、レスリー・チェンが恋人役のエミリー・チュウにチャカを突き付けられているシーンがのっていた。
でも無い!このシーンが!300回ぐらい観ているが!
たぶんまだまだウー学校の生徒としての勉強、修行が足りないのだと思う。だから見えないのだと思う。よし!明日もまた観てみよう!いつかこのシーンに出会えるまで!何度でも!

男たちの挽歌Ⅱ

男たちの挽歌Ⅱ
Ⅰの大ヒットを受けて作られた続編。
ストーリーは…よく日本の刑事ドラマで若い刑事が「イヤ~、俺、ガキができちゃったんですよねぇ~」などと言うと、その刑事は死ぬ。まあ…そんな感じの話である。

正直、ところどころ「?」なシーンが多い。
キャラクターのつながりが、何かよくわからない。
途中に出て来る、絵がすごく上手いマンガ家さんは何なのだろう?ラストもなぜ、あのカットで終わるのか…?

しかし、そういう細かい疑問は、スローモーションや音楽を過剰に多用したウー先生の強引な演出でねじ伏せる!
Ⅰで死んだはずのマーク役のチョウ・ユンファも、双子の弟ケンとして堂々と登場!
もう観ていて細かいことはどうでもよくなってくる。

Ⅰは泣ける映画。Ⅱはケレン味タップリの銃撃戦を楽しむ映画なのだと思う。
ちなみに私に「男たちの挽歌」を紹介してくれたBくんは「Ⅱのほうが面白い」と言っていた。

ジョン・ウーの映画の銃撃戦のシーンは、アメリカの映画学校で教材に採用されていると聞いた。
確かにそれだけのことはある。
「カッコいいドンパチのある映画ベスト10」みたいなのがあれば、この「挽歌Ⅱ」がやはり今もなお、ぶっちぎりで1位ではないだろうか?
「ゲッタウェイ」へのオマージュたっぷりのホテル脱出シーン。
金にまったく興味がなく、撃ち合いにのみ生きがいを感じる横分けグラサンの殺し屋VSキットとケンのタイマン2番勝負。
さまざまなアイディアで飽きることなく見せてくれるラスト10分の長く楽しい皆殺し祭り。
音楽がかかるタイミングも最高にアガる!

タランティーノが脚本を書いた「トゥルーロマンス」でパトリシア・アークウェットがビデオで「挽歌Ⅱ」を観ているシーンがあった。
また、ロバート・ロドリゲス監督の「デスペラード」は完全に「ジョン・ウー風のドンパチがやってみたい!」という映画であった。
挽歌シリーズの熱に浮かされた人たちが、世界中にいることに、何だか嬉しくなった。

キット役を演じたレスリー・チェンは46歳の時、謎の投身自殺をしてしまった。
とても悲しい。
また、ジョン・ウーの映画で、奇蹟の童顔と呼ばれたあの可愛い笑顔と、元気いっぱい拳銃の弾をジャンプしてよける姿が観たかったな…

男たちの挽歌Ⅲ アゲイン 明日への誓い

邦題は変なことになっているが、正統なパート3である。
今までは製作だったツイ・ハークが監督。

時代はさかのぼり、第1作の前の話。舞台はベトナム戦争末期のサイゴン。
マークが香港に来た経緯と、グラサンとロングコートを誰にもらったのかが描かれる…が、正直あんまり関係無いような気がする…

「希望が大きければ失望も大きい。だから何も求めない」と、枯れたオジイチャンのようなセリフをヒロインに炸裂させるマーク。
Ⅰの時の、プライドが高く、失ったモノへの野心をメラメラと燃やすマークとはビタ一文つながらない。

ツイ・ハークは、「挽歌シリーズ」というより、祖国であるベトナムへの想いをこの作品に込めたのだと思う。
戦争末期の混沌としたベトナムの雰囲気が素晴らしい。
マッチの「夕焼けの歌」のカバーバージョンに合わせて、主人公たちが束の間の幸せを味わうシーンのせつなさ…
極上である。

ただ、脚本がちょっと…う~ん…な感じのため、激オシできる傑作とは言いがたい。
正直、私も、このパート3は50回ぐらいしか観てない。
しかし、見所は満載。
ベトナムの雰囲気もそうだが、特筆すべきは銃撃戦。ツイ・ハークの手腕は決してジョン・ウーに負けてないと思う。
ヒロインのアニタ・ムイが、襟首に隠していた拳銃をぶっ放す瞬間。
日本から参戦した時任三郎が、足首に隠していた拳銃をぶっ放す瞬間。
スローモーション、はためくコート、そして絶妙なタイミングでかかる音楽!
ガン上がり間違い無しのカッチョよさである。鳩も飛ビマス!

…以上が、「男たちの挽歌」の正統なシリーズ3部作の紹介である。
他にも、新宿で開催された香港映画祭で来日していたジョン・ウー監督は物静かなジェントルマンだったとか、その時に観た「ワイルドブリット」という映画は最高だったとか(Bくんいわく、宇宙最強の映画)、Ⅰでシンの側近を演じていた獰猛なワニのような顔が印象的なシン・フィオンという俳優さんは、ラストで死んだのにⅡでチャッカリシッカリ復活、元気いっぱい斧を振り回していたなあとか、ユンファが脚を撃たれるシーンでは「ペキペキッ」という骨の砕ける音が入っていて細かいバイオレンス描写にしびれるなあとか、Ⅱの塀を飛び越えて殴りこみをかけるシーンのディーン・セキのポーズは何度観てもおかしいなあ、あの後、絶対転んだろうなあとか!
このシリーズについて話し始めたら、もうキリが無い!
よって、このへんで終了とさせて頂く。

しかし、最後にこれだけは、どうしても。
冒頭でも書いたように、「男たちの挽歌」に似たようなタイトルの作品が非常に多い。

これは、この作品の大ヒットにつけこんだ、柳の下のドジョウを狙え作戦だ。
「チョウ・ユンファ出演作や、香港のギャング映画は、何でもかんでも挽歌っぽい名前にしてしまえ~い!」という、配給会社やビデオ会社のゲスい便乗商法。
その中でも1番ヒドイなと思ったのは「男たちの挽歌4」である。

ニセ男たちの挽歌

「狼たちの挽歌」とか「男たちの鎮魂歌」とかチョット変えるなら、まだ分かる。
しかし、ジョン・ウーもツイ・ハークもチョウ・ユンファも、本家の挽歌にゆかりのある人物は1ミリも関わっていないのに堂々と「男たちの挽歌4」とつけるこの節操の無さ。
これでは、疑うことを知らない、かわいそうなおバカさんは、間違って観に行ってしまうかもしれないではないか!
私が観に行った時のお客さんは4,5人ぐらい。全員男。
スクリーンの中では、何とあのラム・コクバンやマイケル・ウォンなど、私のよく知らない俳優さんたちが熱演。
ヒロインの女の子が薬漬けになったりする、挽歌らしさは微塵も感じられないVシネマのような物語が炸裂!
劇場を後にする男たちは皆、一様に黙して語らず、微妙な雰囲気でした。 ↓

おバカたちの挽歌

(おわり)