燃え上がれ!ホラー魂よ!

ひと昔前のこと。
一度だけ、きちんと本屋さんに置かれる雑誌に、自分のマンガを載せて頂いたことがある。
その雑誌とは、ぶんか社さんの「ホラーM」。
当時、国内でただ一つ生き残っていたホラーマンガ専門誌だ。

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派遣で某カード会社で、向いてないと思いつつイザ始めてみたらホントに全然向いてなかった督促の仕事をしながら、借りた金を全然返してくれない客になぜか逆に毎日電話でどなり散らされまくり上げられて白目むいて気絶寸前になりながら、帰宅後、真夜中、イケてない中2男子が日課の怨みノートを書いてる時の真剣な顔でガリガリ描いて持ち込んだ作品が賞を頂き、掲載となったのだ。

その号を本屋で購入し、開く時は手が震えた。
一番好きな「ホラー」というジャンルで描いた自分の作品が、ついに商業誌に載り、書店に!
うぐいす祥子先生や、押切蓮介先生などの、素晴らしいレギュラー作家のみなさんが、あふれるホラー愛と才能を血しぶきあげて炸裂させている作品群の中に自分のマンガが!
中でも特に、子供の頃からの憧れ、高橋葉介先生と同じ誌面に自分のマンガが載っている!
凄まじい衝撃と畏れと喜びだった。

そして次なる戦いが始まった。
担当の編集さんがつき、次の掲載にむけて、ネーム(コマを割ってセリフとラフな絵を書き込んだマンガの設計図みたいなもの)の持ち込みの始まりである。

前述の派遣の督促業務を続けながら、怒鳴られすぎて心身に異常をきたし精神安定剤漬けになりながら、そのせいでインポになってチンチンをかけなくなったりしながらネームはかいて持ち込みを続けた。

督促業務はイヤだったが、その時は「辞める」という選択肢はなかった。
辞めたら次を探すのがもう大変!
何せ私は「新規の職場につき大量募集!誰にでもできる簡単な仕事です!」とか書いてあるバイトの面接で簡単に落ち、次を探そうと求人誌を開いたら、私が落ちた募集広告が引き続き掲載されているのを、複雑な顔で見る…というようなダメ人間なのだ。全然受からん!面接に!
仕事を辞めて職探しに奔走し、ネームを描けなくなるのがイヤだった。生活のリズムを崩したくなかった。督促の仕事はツラかったが、生活費とマンガを描くための3時間ぐらいは何とか確保できるのだった。

そんなある日、派遣会社から電話。
「あ、倉井さんですか?今回の更新なんですけどね。派遣先がですね、人件費削減のため、今後は正社員だけで業務を回していくということになりまして…それで今回の契約更新は無し。今月いっぱいで退職ということになりまして…あれ?倉井さん?もしもし?」 ↓

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いわゆる派遣切りである。
私を含めて200人ぐらいいた派遣スタッフが全員同時に無双シリーズのザコキャラみたいに一気にバッサリ切られたのだった。

だが、斬られて死んではいられない。
まだ派遣の契約が残ってる内に、収入があり生活のリズムを崩さないでいられる内にネームを通し、一刻も早く新作を載せてもらい、マンガで食えるようになるのだ!
命運を握る殺人鬼に追い立てられるように毎日必死でネームを描き続け、持ち込みを続け、「Dr.スランプ」の中で鳥山先生がマシリトさんに言われてるのでしか聞いたことがなかった「ボツ!」という恐怖ワードを現実に何度も聞きつづけ、描き続けた。(もっとも、もし新作が掲載され、うまく毎号載ることになったとしても、新人は原稿料だけでは食べていけないのもわかっていたが)

そんなある日、担当の女性編集者から電話があった。
「あ、倉井さんですか?あのですね、今までネームをずっと見させて頂いてたのですが、実はですね、次号で「ホラーM」が終了…つまり休刊ということになってしまったので…私も部署が変わるので担当も終了に……あれ?倉井さん?もしもし?」↓

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それからはもうヒドいことばかり起きた。何もかもボロボロになった。
嫌すぎて脳が思い出すのを拒否しているのか、その頃の記憶がハッキリしないぐらいである。
気づいたら東京を去り、故郷の広島に戻っていた。
「もしかすると自分はあの頃すでに死んでいて、今の私は幽霊なのではないか?みんな気を使って言わないだけではないか?」
…と今でも時々思う!

そんなキチガイ幽霊人間がちょっと落ち着き「またホラーマンガを描いてみよう」と思えるようになった。
目指すべき、好きなホラーマンガ誌もあった。
「コミック特盛 新耳袋」である。↓

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実話系ホラーの金字塔「現代百物語 新耳袋」の最恐エピソード「山の牧場」の鯛夢先生によるマンガ化や、日野日出志先生、犬木加奈子先生などのホラー漫画界の巨星のマンガ道を描いた「怪奇まんが道」のシリーズ連載、ホラーMでも大活躍されていた、うぐいす祥子先生、呪みちる先生の作品の掲載などなど…
確かなホラーマンガ愛を感じさせる素晴らしい雑誌で、毎号買ってワクワク読んでいた。

「おこがましいがここに自分も載りたい!新人募集とかはしてないみたいだけど持ち込みしよう!新人らしいフレッシュさは1ミリもないが知らん!手塚治虫先生は、晩年にも持ち込みをして若い編集者を困らせたという!まったく別の意味で困らせることになるかもしれんが突撃あるのみ!」
と迷惑なことを思うようになり、再びホラーマンガを描き始めた。

途中で表紙が↓

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…という感じの今風の絵柄に変わり、雑誌のタイトルも「コミック
特盛新耳袋 アトモス」にプチ変更。
「おお~!前のオドロなのも最高に良かったけど、一般的なウケはこっちのほうがいいのかも。編集スタッフの方が少しでもよくしようとしてるのがわかるなあ!力が入ってるなあ!最近、盛り上がってきてるなあ!…ん?」↓

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「休刊のご挨拶」
「突然ではありますが、今号をもって「コミック特盛」を休刊することになりました」
「部数減少という現実に紙の雑誌という体を維持していくことができなくなり、ここに休刊を決定した次第です」 ↓

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……「ホラーM」に続き「コミック特盛 新耳袋」も休刊。
ここ数年で、ホラーだけでなく、ボツマンが超好きだった「IKKI」など、数々のマンガ誌が休刊になっていった。
紙媒体でマンガ誌の発行を続けるというのは、非常に難しいことなのだろう。

しかし今、この出版界の荒野に、計り知らざる永き眠りからついに目覚めるクトゥルーのごとく、一つのホラーマンガ誌が降臨しようとしている。
「ホラーコミック レザレクション」だ。↓

失われつつあるホラー漫画誌―&。その復活を目指し、インディーズによる新たな本格ホラー漫画専門誌『ホラーコミック レザレクション』の創刊プロジェクトが始動。この企画に賛同した総勢17名の新進気鋭のホラー漫画家・イラストレーター・怪談作家・小説家・画家・アーティストが集結。200ページを超える描き下ろし・未公開作品を含めた...

幻想的かつ美麗な作品で目にした者を魅了する希代のイラストレーター・酒井康彰さんの呼び声に応え、恐力な作家の皆さんがハルマゲドンみたいに大集結!
先日公開なさった「よふさぎさま」で、ホラーマニアをも震え上がらせたオガツカヅオ先生、懐かしのリップウ書房やひばり書房感みなぎるセンスが最高すぎる、面白すぎるマンガ「恐怖 口が目女」を連載中の崇山祟(たかやまたたり)先生、先を読むのが本当に恐ろしくも楽しみな「狂悪殺人録 一家監禁殺害事件」を連載中の稲垣みさお先生などなど…ホラーファン垂涎!夢のようなそうそうたる顔ぶれだ。

プロジェクトのサポート…もとい、儀式への参列の門が閉じられるまで、あと2夜…
ククク…
その血肉を捧げるのにまだけして遅くはない…と思います…
サポートしてくださった方には、その金額によって色んなステキなプレゼント…もとい、輝くトラペゾヘドロン級の秘宝が授けられるらしい…詳しくはホームページをごらん下さい…っていうかこの記事、プロジェクト開始直後とか、もっと早くに書いておくべきだったと思います…
ククク…3千円のお手頃なコースもあるのか…

…っていうか使い魔チックに人の応援ばっかりしてないで自分もがんばろう!がんばってマンガを描こう!
何度死するとも、大地を割り血肉を求めて立ち上がるフルチ・ゾンビのごとく甦れ!
燃え上がれ!ホラー魂よ!
(おわり)