私の「映画 オールタイム・ベスト10」

先日「映画秘宝 オールタイム・ベスト10」という本を買った。

映画監督、マンガ家、俳優、ミュージシャン、ライターなどなど…
各界の映画キチGUY&キチGIRLの濃い155名のみなさんが、今までの人生で観た作品の中からベストな10本を激選。票数によってランキングを決めるという企画の本だ。

結果がいかにも秘宝さんらしくて思わずニヤリ。「あの作品」がマサカーの1位とは!さすがである。
他のランクイン作品も「キネマ旬報」や「映画芸術」などで選出されるメガネ優等生っぽいベスト10とは違い、ワイワイうるさい不良とか鬱屈を抱えた問題児みたいなのが多くて好感度大。
期待通り!にぎやかなお祭りみたいな楽しい本だった。

そう!
人の「映画 オールタイム・ベスト」を聞くのはとても楽しいもの。
ましてや自分が好きな人や尊敬する人のベスト作品はぜひとも知りたくなるもの。
そこで、別に誰からも好かれても尊敬もされていない私も「映画 オールタイム・ベスト10」をぜひとも発表させて頂くことにした。

なお作品を選ぶにあたり「1人の監督につき1作品」「アニメ作品はのぞく」という縛りを設けた。
そうでもしないと好きな映画が多すぎて10本を選ぶのは難しい。「ライスおかわり自由」の特典で村を守ってくれる侍を選ぶより難しい!

私の「映画 オールタイム・ベスト10」

第10位  ゴッドファーザー

10代の頃に観て雰囲気や画面の高級感に驚いた。
「ゴッドファーザーを観よるワシ…オトナよ…あれ?この人はさっき死んだんじゃなかったかのう…?」と思った。誰が誰だかサッパリわからんかった。

それはともかく何よりも暴力シーンの生々しさにしびれた。
《アクションシーン》と《暴力シーン》は違うもの。
例えば同じ銃撃の場面でも「ジョン・ウー作品」のは《アクションシーン》で「ゴッドファーザー」のは《暴力シーン》だと思う。怖い。痛い。
特にソニーが料金所で俺たちに明日はないされるシーンのエグさときたら!
大勢でハチの巣にした後、男が一人歩み寄って念入りに事務的にマシンガンバリバリ。ズタボロの死体にさらに死んだかどうだか見てみようの罰当たりキック。死んどるわ!
「極道版はじめてのおつかい」みたいなマイケルのレストランでの殺シーンの緊張感もすごい。
そしてクライマックス、コッポラの必殺カットバックが炸裂する「洗礼式&5代ボス皆殺し大会」の同時開催もパイプオルガンの音が荘厳に効いててすごい。

しかし一番すごいのは、ソニーが妹のDV夫をストリートでしばき上げるシーンのような気もする。
「このシーンのために、これだけのエキストラや破裂した水道管ジャージャーの美術とか準備したのかあ…凝ってるなあ…」と子供心に感心。街なかで圧倒的な暴力を見かけて呆然としてる時の感じが出てて最高だった。

ところで「ゴッドファーザーと言えば馬の首!」だと思うけれど、映画史にベットリ真っ赤に残るあのシーン。カット割りや編集がギャグマンガみたいで、ハッタリも効きすぎててちょっと笑っちゃうのは私だけだろうか!?「あーーーーーーーーーー!」て。(笑)

第9位  仁義なき戦い(1作目)

ズルセコ組長に踊らされ仲間同士殺し合うようになってしまう若者たち。
しかしラスト。主人公・広能が酒井鉄也の遺影に向かって「てっちゃん…」と優しく話しかける。
仲たがいしてからの「酒井」という呼び捨てではなく、出会った頃と同じように「てっちゃん」と。
ここが切なくてすごく好きだ。

「ゲスの極みオヤジの開く葬式にズカズカ一人で乗り込んできて友の遺影に語りかけ、汚い香典に拳銃乱射!」というあのラストはロックな衝撃のカッコよさとカタルシスだった。
しかし「主人公がラスボスを倒さない!」ということも個人的にはすごい衝撃だった。

ちなみに戦後の広島で青春を過ごした私の叔父によると「仁義なき戦い」というシリーズはあくまで映画。実際に比べると誇張が多かったり、すごく有名だった人がまったく出てこなかったりするそうだ。
叔父の同級生だった方が、当時の広島不良世界ですごく有名だったらしいのだが、まったく出てこないとのこと。
その方はのちに俳優になられたのだが、10代の頃のことは話したがらなかったそうである。
叔父が某団体に属していた頃、懐かしくて会いに行ったら「面会を断られた」と言っていた。

第8位  ヤングガン

砂嵐の中から若きガンマンたちが現われ、出演者ご紹介みたいな感じで1人づつアップに。
そしてカッチョいいロックなテーマ曲がちょうどサビに達したところで怒涛の拳銃乱射!
このオープニングでもうハートを撃ち抜かれまくった。カッコいいー!

そして何といってもエミリオ・エステベス演じるビリー・ザ・キッドが最高!
イタズラみたいに人をバンバン殺しまくり、賞金首かけられ追われ狙われピンチになっても「スリル満点!」と、ケードロやってる時のチビッ子のキラッキラな顔で笑う。
このヤンチャ天使なキチガイ小僧に、登場人物たちも観客もみんな強引にグイグイ引っぱられ、振り回され、たどり着いたクライマックスはスカッと破格のカタルシス!ハイになること間違いなし!

このエミリオ・エステベスの演技は本当にのびやかですごいと思う。
しかしテレビで放映された時はなぜか高嶋政伸さんが吹き替えをやっており微妙なことになっていた。
ちなみに「ヤングガン2」はビリーが仲間を殺されて涙を流したりする「ふつう人間」になっており個人的にはこれまた微妙であった。わしゃキチガイのほうがええ。

そんなキチガイの好みはともかく、なんかムシャクシャして気に食わない奴ら全員ブッ殺してスカッとしたい日は「ヤングガン」か「男たちの挽歌2」を観るのがオススメです。

第7位  狂い咲きサンダーロード

ライブをよく見させて頂いているお笑い芸人のお兄さんが「Blu-ray を買った」と言っておられた。その方は23歳。
「時が流れても消えることなく、若い世代の方にも衝撃を与え続けていく作品なんじゃのう…」と枯れたオジイチャンの顔で感慨にふけった。

しかし!この「反逆者のバイブル」とも言える永遠の名作。もしかして「男子専用」なのかな…?と思うことがある。

…と言うのも、以前、テレビでタレントさんたちが「映画について語り合う的な番組」をやっていた時のこと。
その中で某ロックバンドの女性ボーカルの方がこの「狂い咲きサンダーロード」を紹介。
しかし驚いたのは何と!リンチでカタワにされた男が暴走族&右翼&警察の百姓連合にたった1人でケンカを売るこのロックな映画を!「お間抜けトホホ映画」として紹介していたのである!ガーン!
その方は「だってこの映画、ケンカしてホントに相手のこと殺しちゃったりするんだヨォー!何やってんのよモォー!」などとあきれ笑い顔で言っていた。80年代ズべ公口調だった。全然感動してくれてない!ガーン!

このことが気になった私。その後、何人かの女性に本作のビデオを貸してみた。しかしみなさん一様にキョトン顔。感想を聞いても「う~ん…」とうなった後、ゴダール映画の感想求められた時の私みたいに何も出てこない。全然感動してくれてない!ガガーン!

…いうわけでこの映画、もしかして「男子専用」なのではなかろうか?

世の中には「パシリム女子」や「シンゴジ女子」などの、ステキな好みの女子の方々もおられると聞く。
嗚呼!この世界のどこかに「狂い咲きサンダーロード」を愛する「狂い咲き女子」もいないだろうか!?(こう書くと単に性に乱れた女の子みたいだが)
もし我、「狂い咲き女子」に出会い、愛し愛されたならば!
身も心もその人に捧げ「ごはんですよのフタがあかないの…」の電話で地球の裏側からでも原付でバビーンと駆けつけるにやぶさかではない!ブレーキなんか知らん!
とびっきりの女に会いに行こう!

第6位  七人の侍

20年以上前になるだろうか?黒澤明監督のこの代表作の全国規模の大がかりなリバイバル上映があった。この時はたしかまだソフトが出ておらず、私は未見。「ついに来た!」と野武士襲来の拍子木を聞いた時の侍のスピードで劇場に馳せ参じた。

映画ファンが待ち望んだ伝説の作品の再映。劇場は完全に満員。
そしてあれほど文字通り「老若男女」がミッチリ入り混じった客席というのを見たことがない。「やっと観れる」&「久々に観れる」のワクワクですごい熱気だった。そしてもちろん作品も熱かった。

個人的には完成度という点でいうと「用心棒」や「椿三十郎」、「天国と地獄」などのほうが上なのではないかと思う。
「ワルモノをやっつける」という話で、そのワルモノがマヌケだと緊張感がそがれてしまう。(例:ケビン・コスナー主演のロビンフッドなど)
「七人の侍」のワルモノ:野武士たちは、尺を取って丁寧に語られた百姓&侍とちがい、ほぼキャラクターや背景が描かれない。そのわりに、田んぼに足をボチョンしてしまったり、菊千代にまんまとだまされて鉄砲を奪われたり、マヌケなとこだけチョイチョイ見せてしまっている。
どうせならそんなシーンも無しで、恐るべき暴力の象徴のような顔の見えない不気味な集団として描いたほうが良かったのではないだろうか……などと天下の黒澤明代表作に切腹ものの失礼きわまりない貴様何様なプチダメ出しをしつつもやはり黒澤映画の中で一番好きなのであった。

それにしてもこの映画の三船敏郎は本当にすごい。何たるのびのびさ。
カメラを前にこんなにのびのび演技できる人がいるだろうか!?いやいない!他の役者さんにはできない!尻丸出しだし!
「この役ができるのって地球史上過去未来永劫この人だけかも…」と思った。

ちなみに「カリオストロの城」を観た時「主人公がヒロインと結ばれなくて暗いな~。これハリウッド映画だったらラストでムギュ~!と抱きしめてブチュ~!とやるとこだな~。宮崎駿監督はマジメだな~。」と思った。
そして「七人の侍」のラストにも同じことを思った。ムギュ~!&ブチュ~!しない!かわいい村娘と!一回ヤレただけ!せっかく戦いが終わったのに、街中で偶然会った元カノの顔でなんか冷たい!
「荒野の七人」のラストと大違いである。黒澤明監督はマジメだな~。

第5位  ソナチネ

「たけし映画の中から一本!」となると私はこれ。
ヤクザ、暴力、ユーモア、女、海、虚無感、自殺願望などなど…
「たけし映画っぽいな~」というエッセンスがすべて入っており、バランスも良く絶品。

特に私はこの作品のドンパチのシーンが好きだ。
バーでの「えっ!?そっち!?」と観客も弾丸食らったみたいに思わずビクッとする、意外な方向からの襲撃シーン。
南方英二さん演じる不思議な崇高さすら漂う死神のような殺し屋との、せまいエレベーターの中での撃ち合い。
たけしさんはとにかく暴力シーンのたたみかけるようなカット割り、編集がうまい。
黒澤明監督が以前、インタビューで「アクションは一瞬で終わらせたほうがいい。そのほうがお客さんはタップリ観た気になる。」という趣旨のことを言っておられた。
そういう映画の呼吸のようなものを、シネフィルのイメージはないたけしさんだが、直観的につかんでしまっているのだと思う。

そして何といっても、当時、映画通を自称する人々の間で話題騒然だったラストの殴り込みである。これは映画館で本当にたまげた。
今でこそ巨匠監督だが、当時たけしさんはまだこれが4作目である。「ここまで才能のある、デキる人だったのか!」と驚いた。
劇中繰り返し流れる久石譲さんの旋律にのせ、マシンガンをぶら下げたたけしさんがたった1人で敵のいるホテルに入っていく。それを引きの絵でとらえ、カメラがそのままパンアップ。そして……!!!のシーンである。

以前「映画愛」というインタビュー本の中でたけしさんが「あれがひと勝負だった。反対意見も出やすい。けど、そこの部分だけは譲れなかった。」と言っておられた。見事に勝負に勝ったすごいシーンだと思う。

ちなみに同書の中で「何かすごい変な言い方だけども、自慢するわけじゃないけど、オレは選ばれた人だから。」と言っておられたのがすごく印象的だった。(いい意味だけでなく、選ばれてムチャクチャな人生を歩かされたということ)
私がそのことを強く感じたのは「HANA-BI」でヴェネチア国際映画祭・金獅子賞(グランプリ)を受賞した時だ。日本映画40年ぶりの快挙。
正直、作品のデキ自体はその前の「キッズ・リターン」のほうがいいと思う。しかしあそこで世界的な映画祭でグランプリを取ってしまうということが不思議で特別だ。
「やっぱり、たけしさんってなんか選ばれてるなあ~。」思った。

第4位  パルプフィクション

昔、キネマ旬報に載った「レザボアドッグス」の小さな紹介記事を読んだ時、予感が走った。「これは…!きっと自分向けの映画じゃああ!」と。
こういう予感がした時はたいてい当たるので、渋谷の何とかいうオシャレな映画館へGO。場内ガラガラ。客は私を入れて5人ぐらい。

しかし予感は当たった。葬式帰りみたいな黒いスーツ&タイでキメたアイツらが、スローモーションで歩くあのオープニングで早くも興奮マックス!カッコいいー!
あとは楽しい悲劇をひたすらニヤニヤしながら観た。
ラストの有名な「3すくみからの撃ち合い&全滅」では場内から笑いがもれていた。正しい反応だ。

後に「レザボアドッグス 仁義なき男たち」という微妙な寒タイトルをつけられてしまったビデオを父に観せた。
「これホンマにおもろいんかあ~?」とバカにして、MR.オレンジみたいにゴロゴロ横になって完全になめきった態度でグダグダ観ていた父が、耳切りマドセン射殺シーンで「ええっ!?」と叫んでガバッ!と起き上がり、ホントにMR.オレンジみたいになっていて死ぬほど笑った。

監督のタランティーノは2作目の「パルプフィクション」でカンヌ映画祭グランプリを受賞。
この時の世間の熱狂っぷりは凄かった。2作目にして「天下を取った感」がハンパなかった。映画は大ヒット、サントラもバカ売れ。リバイバル上映された「レザボアドッグス」も今度は連日満員。来日しテレビ出演しまくり喋りまくり。
あらゆる映画雑誌の表紙が主演スターではなく監督の顔で埋まるという異例の事態になっていた。

私は「お前ら映画館にレザボア観に行かんかったクセに、今さらナニ騒いどるんじゃあ!」のめんどくさいファンの顔で夢中で「パルプフィクション」を追いかけた。
試写を観に行き、劇場でも3回観た。純愛バカップルのホールド・アップからストップモーションになりミザルーが流れるあのオープニング!「レザボアドッグス」同様もうここで早くも興奮マックス!カッコいいー!あとはもうエンディングまで夢中である。

ダンスコンテストの出場を強要するイタズラな魅惑のクレオパトラみたいなユマ・サーマン。
「困ったなあ…」という仕草を見せつつも、音楽が鳴るやサタデーナイトフィバるトラボルタ。
幼女のように急に泣きべそをかくマリア・デ・メディロス。
敵だったヴィング・レイムスを救うべく日本刀を手に仁義ある戦いをみせるブルース・ウィリス。
オケツに時計を7年間も隠し続けた話をものすご~くマジメに語るクリストファー・ウォーケンなどなど…
みんなドラッグを3時のオヤツなみに普通に食ったりする困ったヤツらだがひたすらカワイイ。他の作品ともつながるタランティーノ・ユニヴァースのキャラクターとなった俳優たちがチョイ役にいたるまでキラキラと輝いている!

本作を「長くて退屈」という人もいて、それも正しい感想だとは思う。
しかし私にとっては終わって欲しくないバカ騒ぎみたいな楽しい映画だった。

特に「すごいな」と思ったのが、1話目の主人公だったトラヴォルタが、2話目でチョイ役で登場&アッサリ死ぬとこである。
普通の監督だったらチョット盛り上げてしまうと思う。
しかし完全にザコキャラとしてあっけなく死ぬ。全然盛り上げない。こういうとこがすごい粋でセンス抜群だ。

タランティーノは以前、インタビューで「パルプフィクションの脚本は12回書き直した。途中で何度も『この映画はダメかもしれない』と思った。」と言っていた。
「時間やキャラクターたちが交錯し、最後にブーメランのように戻ってきてシブい着地を決めるあの奇跡のような脚本は、才能におぼれず、苦労、努力して書いたんだなあ…」とあらためて感動した。

第3位  ワイルドバンチ

町を牛耳る軍隊200人オーバーVSたった4人。しかもだいぶ背中のくたびれたオッサン。全滅必至の殴り込みをかける前の映画史に残る有名な会話
「Let’s go.」(行くぞ)
「Why not.」(もちろん)
は、もちろん最高。
しかし個人的にはその後、ウィリアム・ホールデンとアーネスト・ボーグナインが無言で笑い合うとこがさらに最高!
死地へと向かう彼らの歩調に合わせボルテージがダダン!ダダン!と上がっていく、死にたくないけど一度はしてみたい、男の憧れ「ワイルドバンチ歩き」。
そして始まるファイナルバトル!
女子供も容赦なく巻き込み、弾丸の嵐が吹き荒れる大残酷流血地獄銃撃戦。
敵味方関係なく片っ端から命を砕いていくマシンガンは死をつかさどる怪物のようだ。
悪魔にとりつかれたかのような細心の狂気の編集。差し挟まれる神の視点のような俯瞰のショット。
命を燃やし尽くすこの戦いにはもはやハルマゲドンのような荘厳さすら漂う。
ウォーレン・オーツの「アーーーーー!イァーーーーー!アーーーーー!」の断末魔クライング・シューティングもモノ凄い!

リメイクのウワサを聞いた。
しかしやっぱり何か神ががり的なモノが宿っている特別な映画だと思うので、無理してあの男たちをよみがえらせなくてもいいような気もする。

第2位  鉄男Ⅱ BODY HAMMER

平凡でおとなしいサラリーマンが怒りパワーで悪魔のような武器人間「鉄男」に変身!体中いろんなトコからカッチカチの銃器がフル勃起!襲いかかる謎のスキンヘッド軍団を撃ちまくり血祭りにあげまくり!そして彼が最後に壊すモノは…というギンギンのハイパーサイバーアクション。ちなみに「Ⅱ」から観てもだいじょうぶ。

暗い地下工場のような秘密基地で殺意みなぎる肉体改造トレーニングに日々明け暮れておりマッスルいかついスキンヘッド軍団。
そして彼らを統率する謎のカリスマ美青年!役名「やつ」!この「やつ」っていうレトロな響きがまたシビれるところ!
物語のカギを握るこの重要な人物を、塚本晋也監督が自ら演じておられる。
そして私はスキンヘッド軍団の皆さまと同様に、「やつ」のミステリアス美魔青年っぷりに完全にホレてイカれてしまったのである!

「シン・ゴジラ」の間教授役など、最近の俳優・塚本晋也もとてもチャーミングだが、この「鉄男Ⅱ」の時の美しさ、カッコ良さときたら!
腕を銃に変える鉄男スキルのプレゼンのため、新宿のガード下で酔っ払いオジサンを銃殺。
奇跡を目の当たりにして驚愕する男の腕をガシッとつかみ自分の胸に当て、鋼鉄の心臓の鼓動を聞かせる。
このガシッ!とつかむ時の体のシャープな動き!もうここで私もハートをガシッ!とつかまれたのであった。

人体実験のムチャな続行を銭ゲバ博士にいさめられて「フ~…」と静かに呼吸を整えるしぐさ。
実験大成功の結果に「いいなァ…」とつぶやく時のお顔の細かなピクピクした動き。
ズラリ並んだスキンヘッド軍団に「鉄男変身ガン」を撃ち込んでいく時の絶対ボス感。
おびえる部下の肩を優しく抱き、BL感いっぱいでなぐさめつつも出撃を無言で即す流し目からの悪い笑顔。
映画館でマネをしてる人を見た、私も家でこっそりマネをしてみた、ラストバトルへ向かう前のキレッキレのカッチョいい変身ポーズなどなど…!
この映画の「塚本萌え」ポイントをあげだしたらキリがない!男も女も鋼鉄みたいにビンビンになること間違いなしの麗しさだ!

監督してはもちろん俳優としてもこれだけのスキルを持つ方がいるだろうか?いやいない!神だ!あの人はやっぱり神だった!
そりゃマーチン・スコセッシ監督作「沈黙」のオーディションにも受かるってもの。

俳優・塚本晋也の魅力の1つに「声」があると思う。
以前のこと。池袋の映画館で、これまでの塚本晋也監督作(鉄男Ⅰ、鉄男Ⅱ、ヒルコ、電柱小僧の冒険)をオールナイトで上映するというイベントがあった。
そのトークショーのコーナーで、ゲストの漫画家・内田春菊先生が塚本監督のことを
「私ねえ、すごく声のいい俳優さんだと思う。」
と言っておられ、客席で私はウムウムと深くうなずいていた。
本当に塚本監督は声がいい。
このイベントの時に監督ご自身が言っておられたのだが、声優として事務所にも所属し、ナレーションなどを何本もやったことがあるとのこと。ちなみにその一つがこのCMである。↓

ちなみに上記のオールナイトイベント。
会場前にはドラクエⅢの発売でしか見たことないような長蛇の列。大きな映画館だったが超満員。
「ワシがこの世で一番、鉄男Ⅱを好きなんよ。」と自負していた私は、同じ想いを抱く人がこんなにたくさんいることにビックリ。塚本監督の人気っぷりを再認識。監督の名でここまでお客さんが呼べる方は、日本では珍しいと思った。
舞台挨拶で田口トモロヲさんが
「鉄男Ⅰの上映初日の時は、お客さん、前のほうにチョコっといるだけだったのに、今日はいったいみんな!どうしちゃったんだいっ!?」
と茶目っ気タップリにシャウト。ドッとお客さんが湧きすごい熱気だった。
そういえば先の劇場公開時も、平日のレイトショーにもかかわらず超満員だった。塚本監督が何かで言っておられた「30代に一度訪れる黄金期」とはこの頃のことかもしれない。私にとっては昔も今もこれからも、変わらず黄金のように不滅の輝きを持っておられるが。

このように、ある特定の好みを持つ人々を、強力な磁石のように引き寄せ、トリコにする「鉄男Ⅱ」。
この作品を「自主制作で作る」というのは本当に大変なことだったと思う。並大抵の人物ならロケハンの段階で挫折してしまっただろう。
「ああ…スキンヘッド軍団の秘密基地に使える場所…見つからない!」…と。
あの秘密基地の場所は、四方八方探しまくって、やっと某工場跡を発見。格安で借りることができたとのこと。
ところが「ある人に『いい場所見つけましたね。どこですか?』と簡単に聞かれムッとした。そういうのは自分で見つけて下さい。」と普段はマイルドな塚本監督が怒って言っておられた。
雑誌のインタビューなのでお言葉通りではないかもしれないが、大変なロケハンだったのは間違いないだろう。

撮影も大変だ。
子供が誘拐されるシーン、東京のど真ん中でのカーチェイス&銃撃戦、そして都庁前での肉体撃鉄(BODY HAMMER)大作動!
ほとんどゲリラ撮影である。
CDショップでの誘拐シーンは事前に区民会館のような場所を借り、テープで棚の位置などをバミって動きを練習。ホントの誘拐計画みたいだ…と思ったら、ホントの誘拐だと思った店員のお兄さんが正義感に燃えて追いかけてきたそうだ。撮影だと分かり、カメラマンの方が一人つかまってボコボコにされフィルムを抜き取られたとのこと。
そんな苦労もあってか、このシーン、ものすごい臨場感である。周りで驚いてる人たちはホントのお客さんでホントにビックリしてるのだ。その後の誘拐犯を追って電車の中、駅のホームを駆け抜けるシーンの疾走感もすごい。

劇中、何度もバンバン炸裂しまくる弾着は、最初プロの方にオーダーする予定だったが、結局ご自分たちで開発。そして東京のど真ん中での派手な弾着は2回ほど警察に捕まったとのこと。「でしょうね。」としか言いようがない。

子役のオーディションも大変だったと思う。
イメージに合った子供を探し、映画のコンセプトを説明し、親御さんを説得しなければならない。
「お父さま、お母さま、この作品は体中いろんなとこからチンチンみたいなカチカチの銃器がビンビン出てきて撃ち殺しまくる映画です。ちなみに私の前作『鉄男』はでっかい鋼鉄のチンチンが『やりまくるぞー!』と叫んで街を爆走する映画です。壊れりゃいいんだ!全部!ウヒィ!」と説明しなければならない。親御さんが警察官だったら撃ち殺されるかもしれない。
しかも子供の腕に鉄男ガンの弾着を取りつける必要もあるのだ!説得はこりゃもう無理!しかしその無理をなさってるのである!

スタッフさんのことも大変だったはずだ。
「スタッフ募集!」のお知らせで集まった一般の皆さん。基本的にノーギャラだ。
そしてノーギャラで戦場のような過酷な撮影に長期間にわたって耐えてもらわなければならない。
ギャラが払えるならまだいい。「払った分はちゃんと働いてくれ」と言えるから。しかしそれが言えない。
実際、やめてしまう人も多く、60人ぐらい集まった中で最終的に残ったのは7人だけだったそうだ。(塚本監督曰く「七人の侍」)
そういった「人が去ってしまう…ノーギャラでどこまで過酷な作業を強いることができるだろう…みんな生活もあるのだし…」などの対人関係のプレッシャーにも耐えなければならない…

このような数々の困難さを思うだけでもう気が遠くなり、私などは泡ふいて倒れそうになってしまう。本当によく自主制作で撮りきったものだ。
しかも撮影は16ミリフィルム。現像してみないとちゃんと撮れてるかわからない。
製作費は全部合わせて約1億円。
1円もなかったどころか「鉄男Ⅰ」の借金が30万円ぐらい残ってるのに、中古のカメラとアイランプを2つだけ買って撮り始めたそうである。
「やる人」というのはそういうものなのだろう。
そういえば先日、塚本監督のこんなツイートが流れてきた。↓

時代劇を自主制作でお撮りになるとは…う~ん…すごい!
これからも塚本監督はやりまくるぞー!

※追記
ちなみに下の写真は、昔、まだ世の中にDVDもない頃に出たレーザーディスクセットである。完全限定生産。予約された数しか作られなかったシリアルナンバー入りのもの。
私は当時、当然、迷わず予約購入。
しかしレーザーディスクのプレーヤーは持ってないので未だに一度も観たことがない!パンフレットをキチガイ信者の顔でニヤニヤ読むだけ!ニヤニヤ!

第1位  男たちの挽歌

この映画への私の偏愛っぷりは以前に別の記事で長々と書かせて頂いた
なのでここでは詳述はさける。
とにかく「映画に惚れる」という体験をした初めての特別格別な一本でした。

1位  男たちの挽歌
2位  鉄男Ⅱ
3位  ワイルドバンチ
4位  パルプフィクション
5位  ソナチネ
6位  七人の侍
7位  狂い咲きサンダーロード
8位  ヤングガン
9位  仁義なき戦い
10位  ゴッドファーザー

以上が私の「オールタイム・ベスト10」である。なぜか殺し合いムービーばっかり。
ちなみに泣く泣く選外にしたのは「ガキ帝国」「プロジェクトA」「ジョーズ」「白熱」「エル」「穴(ジャック・ベッケル監督)」「テナント」「コントラクトキラー」「Ⅿ」「GONIN」「キャリー」「死霊のはらわたⅡ」「ゾンビ」「雄呂血」「ツィゴイネルワイゼン」「蛇の道」「新しき世界」「シン・ゴジラ」などなど…たくさん!

なので今回、この「オールタイム・ベスト10」を長々と書いてわかったのは「オールタイム・ベスト10は無理!10本に絞るのは無理!順位つけるのも無理!」ということである!

(おわり)

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