生まれて間もなき我が娘よ。君に何を伝えよう?

キャリー
映画「キャリー」が、クロエ・モレッツ主演でリメイクされた。
旧作のブライアン・デ・パルマ版は、言わずと知れた大傑作。
超えるのは難しいはず。
これは、劇場で確認する必要はないだろう。
スルーにしよう。
しかし「映画秘宝」によると、プールのシーンがあったり、胸元ザックリのドレスを着たりと、どうやらクロエ・モレッツのアイドル映画になってしまっているらしい。
何たること。
心中おだやかではない。
暗黒青春映画のテイストが、まったく損なわれてしまっているのではないか?
これは、劇場で確認する必要があるだろう。
別にヒットガール姉さんのスク水姿が見たいわけではない。断じて。
行ク!ワシは!劇場へ!走って!
クロエたんに会いに!

ところで旧作のデパルマ版「キャリー」について。
きっと「人生ベスト映画」にあげる方も多い作品ではないか?
私もそうだ。

映画の冒頭は、キャリーの通う高校。バレーボールのシーン。
運動が苦手なキャリーは、コートの中でオロオロとたたずんでいる。
ボールで狙われ、うまく対処できなかったことをなじられ、はたかれる。
その後、シャワーを浴びている時に、遅い初潮をむかえる。
しかし、狂信的なキリスト教徒であるキャリーの母は、性欲を罪と捉えており、娘にまったく性教育をしていない。
自分の体に何が起こっているのか分からず、大量の出血にパニックを起こすキャリー。
自分をイジメているクラスメイトたちに、泣きながらすがりつく。
しかし、みんなは、そんなキャリーを笑い、大はしゃぎで生理用品を投げつける…

…という、開幕早々、凄まじく胸が痛むシーンの連続コンボ。
高校時代で1番うれしかったのは「誰かの呪いみたいな謎の連続豪雨で、体育祭がついに中止になったこと」という、ドンヨリした青春を送った私は、キャリーの苦しみが他人事とは思えず。
デパルマ監督の容赦ないハードパンチの連打に完全にノックアウトされた。
観るたびにいつも、スクリーンの中に入っていって、そっとキャリーの細い肩に手を置き
「キャリーさん。君の超能力で、こいつら全員、ブッこんでいいんだよ。ボディーを透明にしちゃいなよ。」
と優しい声をかけてあげたくなってしまう。

ビデオレンタル屋に行くと、「キャリー」はおそらく、ホラーやSFの棚にホッソリと並んでいるだろう。
しかし、この作品は「痛い青春映画」でもあるのだ。
キャリーは、狂信的な母親に育てられたせいで、コンプレックスを抱え込んでしまい、その呪縛から、なかなか逃れられない。
この母親は悪い。
しかし、誰しも彼女のようになってしまう可能性は、あるのではないだろうか?
以前、いた。
私の隣の家にも。キャリーママが。

その女性は、1人息子のタカシ君に対して非常に…いや、私から見ると、異常に教育熱心。
公文、ピアノ、水泳、習字、英会話などを、かけもちで習わせていた。
タカシ君に聞いてみると、1日のうちに、塾を3件ハシゴする日もあるとのこと。
背中を丸め、キャリーのような暗い目をして塾に向かうタカシくんを見るたび、
「そんな、詰め込み教育を親に押しつけられては、いつか疲れてダメになってしまうのではないだろうか?」
…と何だか、かわいそうになったものだ。

タカシ君のお母様が特に力を入れていたのは英会話だった。
日常にもなるべく、英会話を取り入れようという方針らしく、よく隣の家から、
「Good morning タカシ!」
「タカシ!Hurry up!」
などと、急いで耳をふさぎたくなる声がよく聞こえてきた。
家の前で、バッタリ会ったりすると
「Good afternoon ミスター倉井!」
などと声をかけられるので、何となく恥ずかしかった。
そのため、なるべく外の気配を確かめ、タカシ君のお母様がいないタイミングを見計らって家を出るようにする…というメタルギアソリッドのような外出方法を取っていた私。

しかし、ある日、ちょうど帰宅した痛教育マ…もとい、タカシくんママと家の前でバッタリ。
「Oh!倉井さん、お出かけ?デート?」
と聞かれ
「いえ、1人で映画ですよ。彼女とかいないですし。」
と答えると、ビバリーヒルズ白書に出て来る役者さんのように、おおげさに悲しい表情をし、両手を広げ、首をふりながら
「Oh…lonely boy…」
と、ニセ外人ババア。
「大きなお世話だ!何が、Oh…lonely boy…だ!この英語カブレが!痛教育ママゴンが!タカシ君をもっと自由に遊ばせやがれ!」
と言えるはずもなく
「いや~アハハ…」
と、ヒクヒクひきつりまくった作り笑いでやりすごすのが精一杯であった。

私の転居で、このご家族とは疎遠になった。
その後、タカシ君はどうなっただろう?
キャリーのように、抑えつけられたエネルギーを、どこかでマイナス大爆発させてないか心配だ。

しかし、私も自信がない。
キャリーママや、タカシくんママを非難できないかもしれない。
知らず知らずのうちに、自分の子供に、ゆがんだ価値観を押し付けてしまうのではないか?
子育ては難しい。
自分の娘には、まっとうに、健やかな、良い子に育って欲しい。
しかし、いったいどうすれば ↓

倉井クロエかあ…

…というような健全な娘に育ってくれるのだろう?

生まれて間もなき我が娘よ。
君に何を伝えよう?
子守唄として、80年代のアニソン、戸川純ちゃん、筋肉少女帯を順繰りに聞かせようと思うが、キングクリムゾンや、ジョイディヴィジョンなどの洋楽も、ローテーションに組み込んだほうがいいだろうか?

6歳になったら、永井豪先生の「デビルマン」を読ませようと思うが、あまりに遅すぎるだろうか?

映画「死霊のはらわた」は「Ⅱ」から見せようと思うが、「鉄男」は「Ⅰ」からのほうがいいだろうか?

雑誌は「ファミ通」と「映画秘宝」と「ムー」はもちろんだが、アニメ・プラモ関連は「月刊ニュータイプ」と「HobbyJAPAN」だけでは物足りないと怒るだろうか?
「グレートメカニック」もラインナップに追加するべきだろうか?

何に対してもキレやすくなってしまうという恐ろしい「ゲーム脳」になるのを防ぐため、ファミコン版「スペランカー」「リンクの冒険」「ドラクエⅡ」のクリアを課し、忍耐というものを学んでもらおうと思うが、ラゴスが見つからなくて途中で泣いてしまうだろうか?

将来、君とつきあう相手はジョナサン・ジョースター以外はお断りだが、ディオ・ブランドーみたいに、狡猾でカリスマもある男が近づいてきたら、どうすればいいだろうか?
やはり、君を守るため、今からでも波紋の修行を始めたほうがいいのだろうか?

…っていうか、娘もいないのに、さっきから私は何を言っているのだろうか?
そもそも娘どころか嫁…どころか彼女もいないのは、なぜなのだろうか?
やはり、天パーがいけないのだろうか?
それとも、いい年こいてウンチシッコオナラなこのブログに問題があるのだろうか?
今年のクリスマスも、いつも通り普通に汗ミドロでボロクソミドロに仕事をしているのだろうか?
私はいつまで1人ぼっちなのだろうか?
Oh…lonely boy…

(おわり)

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