戸川純ライブレポート 2016年6月4日広島クラブクアトロ

ひと昔前、新宿にある、とある会社でバイトをしていた。
そこは「仕事中、オフィス内に好きな音楽をかけていいよ~」という、なかなか嬉しいゆるゆるの環境だった。

バイトのみんなが持ち寄ったCDをかけるのは私の担当。席がたまたまCDプレイヤーの横だったからだ。
私は「CDかけ係」の職権を乱用。みんなが持ってきた明るいJポップを黒く塗りつぶすように「ヴェルベット・アンダーグラウンド」とか「ジョイ・ディヴィジョン」とか、自分好みの闇寄り音楽をガンガン優先的にかけまくり一人ノリノリ。若いみんなに「暗黒DJ父さん」と呼ばれ迷惑がられていた。

ある日、いつも通りお気に入りミュージシャンの歌をかけ、職場を微妙な雰囲気にさせていると、私より一回りぐらい若いある兄ちゃんが私の前にツカツカ。目は興奮でギラギラ。
「ああ、ついに度重なる職権乱用に怒りの鉄槌を下される時が来た。ごめんなさぁい、これからはみんなが持ってきたCDを飛ばさずちゃんと順番にかけますぅ!」
と、殴られるより早くスライディング土下座しようとすると、その子はこう言った。
「倉井さんっ!今かけているのは何ていう人ですかっ!?教えてくださいっ!これスゲーいいっすね!スゲー!」
その時、私がかけていたのが戸川純ちゃんのアルバムであった。

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そして、この若い子の反応は、十数年前、高校生の頃、クラスメイトに純ちゃんの歌を初めて聞かされた時の私とまったく同じものだった。
「こりゃなんちゅう人の歌ねっ!?バリすごいねっ!」
その時以来、私は純ちゃんのCDやビデオ、インタビュー記事が載っている「宝島」などの雑誌を過去のモノまで集めまくり、テレビ出演がある時は必ず録画。上京してからはライブにも足を運ぶようになった。現在、家のトイレはもちろんINAXではなくTOTOのウォシュレットである。

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純ちゃんのことを聞いてきた彼も後日
「あれから戸川純のCD集めまくってるんですよ。最近は『昆虫軍』を目覚ましにセットして毎朝起きてますっ!」
とサワヤカなことを言っていた。

純ちゃんの唯一無二の超独特な魅力は、ある特定の人々に魔法のように強烈に作用し、いつの時代になっても熱狂的ファンを産み続けると思う。
そして生まれた!ここにまた一人!ニヤリ!

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「じゃあ今から戸川純を聞いてみよう!」というイカすあなたには、入り口として下記の3枚のアルバムが良いのではないかと個人的には思う。

「好き好き大好き」

萌え萌えロリータボイスから一転して狂暴毒婦へ。変幻自在な純ちゃんボーカルを存分に堪能できるアルバムタイトル曲「好き好き大好き」を収録。名作映画オマージュがギッシリ詰め込まれたPVも素晴らしい「遅咲きガール」も最狂のアイドルソングで最高!

「東京の野蛮」

ベストアルバム。「牛のように豚のように殺してもいい。我、一塊の肉塊なり」という韻を踏んだ歌詞が凄まじい「諦念プシガンガ」。この歌が1番好きで、色んな人に無理矢理聞かせる困った純ちゃんファンは多いという。私だ。
「カノン」の旋律にのせた歌詞が哀しくも美しい「蛹化の女(むしのおんな)」、巻き舌、ビブラート、ファルセット…多彩な技と表現力に聞いて驚け「レーダーマン」も収録されており、お得な一枚。

「ヤプーズ計画」

純ちゃんがボーカルを努めたバンド「ヤプーズ」のファーストアルバム。バンド名は日本文学史に名を残す奇書、SF&SM小説「家畜人ヤプー」から。
バンド名通りSF色の強いイカす名盤。代表曲の一つである、元祖エロかっこいい「バーバラ・セクサロイド」はもちろん、個人的には藤子F不二雄先生の名作短編みたいなテイストの「宇宙士官候補生」がロマンチックに泣けて好き。

そして純ちゃんには、映画監督作もあるのだ。
1991年に公開された「ワンルームストーリー」という3話構成のオムニバス作品の中の一つ「いかしたベイビー」という短編である。

oneroomstory

しかし原作はアーバンライフのオシャレ恋愛マンガ…それを純ちゃんが監督?…と思って観に行ったら、原作をフリーダムに改変して白塗り暗黒舞踏集団「山海塾」が出てくる映画になっていた。ついでに内蔵もムキ出ていた。イカす。

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(パンフレットより)

幼女っぽいから妖女っぽいまでキャラをクルクルガラリと変えることができるのが、純ちゃんのモノ凄い魅力の一つ。
そして数々の出演作品の中で、その必殺が1番炸裂しているのが、自らが監督なさったこの作品だと思う。きっとご自分の生かし方を誰よりもわかってらしたのだろう。
それと実はバーバラ・セクサロイドなわがままボディーの持ち主でもあり、この映画の純ちゃんは何気にエロいし、色んなコスプレが楽しめるのも眼福。

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(パンフレットより)

ファンだから完全にひいき目で観て言うのだが、「ああ俺も恋してぇ~!」という良い恋愛映画の鑑賞後に特有の高揚感もキュンキュン感じることのできる傑作である。
当時、キネマ旬報とTOKYO WALKERの読者投稿欄に「戸川純さんの映画、傑作だった」という投稿があり、「ああ、観てる人は観てるんだなあ~」と観てた私はうれしくなった。(VHSのビデオしか出てないようだが、某動画サイトで観れますね…ホントはいけないけど!)

さて、その戸川純ちゃんのライブが先日6月4日、広島で行われた。
先週のオバマさんに続き、最重要VIPが大天使のように広島に降臨!
雨のふる中、純ちゃんのことを好き好き大好きな日本戸川党員たちがクラブクアトロに集結!満員!
ファン層は若い子から私のような中年、そして初老の方まで本当に幅広かった。

フロントアクトはゴトウイズミさんによるアコーディオン弾き語り。
レトロな秘密の地下キャバレーに迷い込んだような気分にさせる見事なパフォーマンス。
経営なさっているカフェ「十日市アパート」は、以前からチラシなどを拝見して、イカすアングラな雰囲気にビンビンきていた。今回のライブを見てますます行ってみたくなった。

そして会場が暖まったところで、ついに戸川純ちゃんとメンバーのみなさんが登場!
生玉姫様を拝見するのは実に十年以上ぶり。
交通事故のケガの影響による過食のため、ちょっとポッチャリなさったのを気にしておられたが、言葉を選び、独特のリズムではにかみながら話すチャーミングさは昔のままだ。みんなニコニコで「純ちゃーん!純ちゃーん!」と歓声の嵐。
やはりみんな「純ちゃん」と呼ぶ。(私もナレナレしく「ちゃん付け」でこの文を書かせて頂いているが、どうしても他の呼び方がシックリこない。ご容赦頂きたい。)

悪化した腰痛のため、基本的に座ったままでの歌唱になるとのことだったので、「シットリした感じの曲が中心の静かなライブになるのかな?」と勝手に思っていた。
しかし1曲目に始まったのは矢壁アツノブさんのパワフルなドラムがビリビリと胸を振るわせる破壊力満点のナンバー「ヴィールス」!
座ったままマイクを握る純ちゃんは、まるで玉座に腰かけたロリータ帝国の絶対女王のような圧倒的存在感!
変幻自在のミラクルボーカルも声量も「衰え?何ソレ?」のド健在!会場のテンションは一気にMAX!スゲー!
(画力、観察力の無さが申し訳ないのですが、衣装などはこんな感じだったと思います。お顔も似なくてスミマセン)↓

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ちなみにセットリストは下記の通り。

1 ヴィールス
2 バーバラ・セクサロイド
3 それいけ!ロリータ危機一髪
4 ヒステリア
5 眼球奇譚
6 諦念プシガンガ
7 lilac
8 本能の少女
9 私の中の他人
10 フリートーキング

休憩

11 赤い戦車
12 ダイヤルMを廻せ!
13 金星
14 蛹化の女
15 吹けば飛ぶよな男だが
16 好き好き大好き
17 バージンブルース
18 母子受精
19 肉屋のように
20 電車でGO
21 レーダーマン

アンコール
パンク蛹化の女

「バーバラ・セクサロイド」では、妖艶な振り付けをサービスたっぷりに披露。何でもかんでもしてくれる純ちゃんに感謝。
私は年をとって、もう下も上もゆるゆるで涙腺がバカになっており、4曲目の「ヒステリア」で早くもボロボロ泣いてしまった。次の「ベルヴェッツっぽい曲を…」のMCで始まった「眼球奇譚」ではもう涙が枯れ果てて赤い涙が出そうなくらい、眼球のおもらし状態であった。
前半最後の「フリートーキング」では昔と同様、立って踊って歌って下さり、みんな大喜び!
しかし、休憩で舞台袖にはける時、メンバーの方にささえられていたので、腰の状態が実は相当悪かったのかもしれない。

2部では「蜷川さんに捧げます」のMCで「蛹化の女」を披露。
やはり永遠の名曲。祈りを込めるように歌う純ちゃんはとても美しく、昔のようにトンボの羽根をしょって歌ってもまだ全然大丈夫!と思ったし、「電車でGO」の時は、なんならランドセルもまだまだ全然大丈夫!と思った。

アンコールに応えてラストを飾るのは、やはりこの曲「パンク蛹化の女」だった。
立ち上がり、破壊的なまでのパワフルな歌唱。会場のみんなも思わず拳をあげる!四十肩のワシも拳を上げる!

最後に「会場のあちらの人にもこちらの人にも届くように一生懸命歌いました。身近な人が急に亡くなってしまうこともあるから…みなさんも体力つけてがんばってくださいね。私もがんばります。」というような純ちゃんらしい誠実な言葉を残しステージを後に。大盛況でライブは終了。
吹けば飛ぶよな男だが見に来て良かった。生きてて良かった。

後ろで終始ニコニコしながらベースを弾いておられた中原信雄さん。
頼もしい職人のようなカッコいい佇まいでキーボードやアコーディオンを弾いておられたライオン・メリィさん。
パワフルで気持ちいい爆裂ドラムを聞かせてくれた矢壁アツノブさん。
ギターの演奏だけでなく、絶妙なコメントでも何度も会場を沸かせてくれた石塚伯広さん。
ハイテンションに踊りながら、機材をあやつり、多彩な音を紡ぎ出しておられた山口慎一さん。
メンバーのみなさんもとてもいい感じであった。

ちなみに次回は東京の新宿ロフトで、6月15日に人間椅子との対バン、7月8日にワンマンライブが行われるそうである。
ところで、絵にもちょっと描かせて頂いたが、純ちゃんが座って歌う場合は、譜面台(?)がナナメ前に置いてある。
そのため会場の左側にいると、譜面台で純ちゃんのお顔が隠れてしまい、ちょっと見えにくいかもしれない。
顔をのぞかせたり、曲によっては立って歌って下さるのだが、ずっとお顔を見ながら聞きたければ、会場の右側のほうにいたほうがいいのかも?…と、ちょっと思った。
かく言う私も最初、左のほうに立っていたのだが「やはりお顔が見たい」と思い、休憩の時に右側に移動させて頂いた。
しかし、みんなが右側にゲルマン民族大移動すると、大盛況のノリノリライブなのになぜか左側だけコンクリ乾燥中みたいに誰もいないという変な会場になってしまう。状況に応じて純ちゃんを困らせぬよう対応しよう!
とにもかくにも6月15日と7月8日、東京の日本戸川党員の方々は、新宿へ電車でGOである!
(おわり)