暑い!夏が!
我が家では電気代節約のため、財布を握る父より「クーラー使用制限法」が発令された。
よって、窓を開け、風通しを少しでも良くし、扇風機を最大風力で使用。しかし…ああ!巻き起こるは熱風のみ。
その上、どう考えても網戸の目よりも大きい蛾が、なぜか手品みたいに何匹も部屋に出現。パタパタと鱗粉をまき散らしている。
吹き荒れる熱風、舞い狂うモスラの群れ、そして苦悶の表情で滝のような汗を流しながら毒蛾と戦う全裸のワシ。
我が部屋はさながら、人知れぬ熱帯の絶海の孤島で繰り広げられる「モスラVSサンダ」みたいな地獄風景と化している!
ああ!早くゴジラが来て何もかも踏み潰してくれぬものか。
ちなみに夏の予定は、ハリウッド版「ゴジラ」を観たら、後は一切何も無し。
寒い!人生が!
…というわけで、前回に引き続き「80年代のおすすめアニメ映画」を今回も全力で紹介させて頂く。
80年代のおすすめアニメ映画 その②
(その➀はこちら)
「浮浪雲」
1982年 監督:真崎守
幕末の品川を舞台に、浮浪雲(はぐれぐも)と呼ばれる遊び人と、彼を取り巻く人々の人間模様を描く。
子供の頃、劇場ではなく、テレビ放映時に観た。青年誌に連載していたジョージ秋山先生の原作は読んだことがなかった。
しかし少年ジャンプ誌上で異彩を放ちまくっていた「シャカの息子」「海人ゴンズイ」は連載時にリアルタイムで衝撃のジョージ体験。
よって「今晩テレビで…ゴンズイの人の…アニメがある…」と何となくドキドキしながら鑑賞。ツツガムシもウツボの大群も出てこず、ちょっとホッとした。
そして登場人物たちと同じように雲さんにスッカリ魅了された。
浮浪雲という人の魅力とは、強くなさそでホントは強い(+何を考えてるんだか量りかねる)っていうところではないだろうか?
この映画でも、いつもの両刃の長い仕込み杖で無敵に素敵な立ち回りをたびたび披露。途中では坂本竜馬と共闘、新撰組を余裕で翻弄。
どんな殺伐とした状況でもひょうひょうとした雲に、おかめさんならずとも惚れること間違いなし。
山城新吾さんの声も個人的にはアリだったと思う。でん、でん、ででん、でん!
今回見直して、スタッフに「妖獣都市」の川尻善昭さんが参加なさっていたことを知った。そして他のシーンとあまりにも雰囲気が違って狂暴で、強烈に印象に残っていた竜馬暗殺シーンは、マンガ家の村野守美さんによる絵コンテだったことも知った。
豪華だ!
「クラッシャージョウ」
1983年 監督:安彦良和
高千穂遙さんのスペースオペラ小説の映画化。「クラッシャー」と呼ばれる「宇宙の何でも屋」のジョウが、仲間と共に星々を駆け巡る大冒険を繰り広げる。
この作品はもう本当に手放しで激しくオススメ!
最初のカーチェイスからもう最高。その後の勇壮なメインテーマに合わせてのキャラ紹介のカッチョよさに早くも興奮マックス。大冒険の予感にワクワク。
キャラ立ちも完璧。アルフィンの可愛らしさにメロメロ(安彦良和さんの描く女性は、なぜこうも色っぽいのだろう!)
タロスとリッキーの絶妙なコンビにニコニコ。
ディテールにも凝っており、チョコッと登場するモンスターなどのデザインに、鳥山明さん、竹宮恵子さん、大友克洋さんなどのそうそうたる豪華メンツが参加。
劇中に出てくるダーティーペアの映画も凄まじい高クオリティーで強烈。
ディスコの明るいケンカシーンも最高。
笑えて泣けて萌えて燃えて、宇宙が熱い!満席の劇場もみんなの興奮で熱かった!
この作品をリアルタイムで映画館で観れたのは幸運だったのかもしれない。
ラスト、1つの冒険を終え、安息の表情で愛機ミネルバの操縦席に着くジョウたち。合わせてエンディングテーマ「飛翔 Never End 」が流れる。
客席で見ている私たちも、宇宙を駆け巡る熱い冒険を終え、ジョウたちと共にミネルバの操縦席に着いているような満足感、充足感を味わえる最高の映画体験だった。
しかしこの作品、なぜか単体でのDVDが発売されていない。
後に製作されたOVAと合わせてのBOX仕様となっており、お値段が1万5千円ぐらい…とチョッピリ悲しいことになっている。(しかしそれでもアマゾンで星5つ!)
以前は新宿のTSUTAYAにVHSのビデオが1本置いてあったが、もうビデオのレンタルなんてもちろんないし…
もっと、お手ごろ価格でみんなが観れるようになればいいのにな…
※追記:ついに!Amazonビデオで観れるようになりました!うおお!めでたい!宇宙が熱い!(2018年 3月14日)
「冒険者たち ガンバと7匹のなかま」
1984年 監督:出崎統
ネズミのガンバと仲間たちが、ノロイという大イタチに立ち向かう話。
70年代に放映されたテレビシリーズを、劇場用に再編集したもの。1本の映画として、素晴らしく良くまとまっている!
ダビングしたVHSのビデオが擦り切れるんじゃないかっていうぐらい、何度も観た。(現在、発売されているDVDは後に公開された「ガンバとカワウソの冒険」も収録)
クライマックス、弱き者たちのため、自らの命をかけて最後の決戦に挑む小さな七人の侍たち。
そして計画通り脱出できた…はずなのに1人(1匹?)ノロイに食らいついていくガンバ!
この「迷わずあえて死地に戻る」とこがイイのだ!
止め絵を駆使した「出崎演出」も最高!グッとコブシを握りこむこと間違いなしだ!
キャラクター造形も素晴らしい。
ガンバたち7匹の個性の描き分け、それを活かした全員の見せ場をキッチリと用意する丁寧な作劇。キャラクターへの愛情に満ちている。(個人的にはイカサマのファンであった。)
しかし、キャラクターと言えばやはり…何といっても…敵の白い大イタチ、「ノロイ」だろう。
2足でスラリと立ち、ユラリと手をふって手下をあやつり、催眠術でガンバたちを幻惑(今見てもモノ凄いサイケ演出)
そして、ただひたすら楽しむためだけに殺す。
「カカカカ…ようこそ、うす汚いネズミどもよ」
の名セリフや、大塚周夫さんの超シブいオジサマボイスで自分のことを「アタシ」と呼ぶのもインパクト大。
朝日が昇る海辺での断末魔の大暴れ大虐殺は、プライベートライアンも裸足で逃げ出す凄まじさ!(ワシ的には)
この白い悪魔と手下たちの姿に、子供の頃、ネズミさんたちと共に心底震え上がった。
確か当時の「アニメージュ」で、どなたかがノロイのことを「この世の醜い物すべてを集めて、美しく光り輝いているよう」と書かれていたと記憶する。
まさに!ノロイこそアニメ史上、いや、映画史上に残る、美しくも恐ろしい最高の悪役の1人(1匹?)だろう。
ちなみに恐ろしいと言えば、テレビ版のエンディングテーマ「冒険者たちのバラード」もトラウマ級に怖かった。歌詞も絵も。
この歌、映画版の本作でもラストに流れる。超名曲なので嬉しいことは嬉しい。
しかし、敵を倒して大団円!…の後で「けれど夕日はオマエと仲間のドクロをうつす…」という戦慄の歌詞でフッツリと終わるこの恐歌が流れてしまうため、微妙に不気味な余韻を残すラストになってしまっているような気も…なんとなくする…
…しかしそれでも!さあ、みんな!シッポを立てろ!
「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」
1984年 監督:石黒昇 河森正治
凄まじい軍事力を持つ巨人たちの侵略を受けた人類。勝ち目は無い。
しかし、戦うことしか知らぬ巨人たちは、人類の文化活動、特に男女の恋愛に触れると、胸がキュンキュン萌えて悶絶。戦闘不能状態におちいることが判明。
そこで可愛いアイドルにフリフリの服を着せ、ラブソングを歌わせ、こわい巨人たちがときめいて身もだえしているスキに、今だ!チャンスだ!やっつけろ!という童貞が考えたみたいな作戦で勝利をおさめ、作品的にも大勝利をおさめている凄すぎる映画。
以前、宇多丸さんが「歌が世界を救うみたいな映画は難しい」という趣旨のことをおっしゃっていた。
世界を救ったり変えたりする歌が、いざ劇中で流れたら「♪ス~ダララ~♪」とか「無音」だったりしたら確かに…微妙…かもしれない。
その点、この「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」は、実は凄く高いハードルをキューンキューンとクリアしているのではないだろうか?
ただ、「なぜマクロスが宇宙にいて、船内に街があるのか?」の説明がまったく無い。
いきなり始まるので予備知識が無い人には?状態。
その点は1本の映画作品として、やはりちょっと良くないと思う(Blu-ray ディスク版では、最初に状況説明のテロップが出るもよう。ちなみに簡単に説明すると、地球が攻撃を受けたため、マクロスに民間人を乗せてワープ!何とか宇宙に逃げて、しばらくたった後…というところから始まるのです)
しかし、それ以外は本当に素晴らしい。
作画が安定しなかったテレビ版と違い、全編、驚愕のハイクオリティー。スタッフの方の気合、こだわりがビンビン伝わってくる。
暗闇から少しづつマクロスが姿を現し、全体が見えたところでタイトルどーん!テンションがーん!↑
続くドッグファイトでのパイロットの「ハ~ハ~」という呼吸音、心拍音のディテール演出。開幕早々シビれた!
もちろん板野サーカスも「これでもか!」と、目にも留まらぬ高速で炸裂!80年代のすべての中学生男子は皆、板野サーカスで動体視力を鍛えたのだ!
なにげにスプラッター描写も多く、ゼントラーディーの兵士の頭部が踏み潰されてスイカみたいに砕けたり、ガレキの下敷きになった民間人が首チョンパになったりするシーンが、心のこもった丁寧な作画で描かれる(この首チョンパシーンは、WOWOWで放送された時、なぜかカットされていた。何たる悲劇だ!)
ミンメイの歌に合わせて展開されるクライマックスの戦闘シーンの高揚感。すべてのキャラに見せ場を持たせる、かゆい所に手が届きまくった演出(カイフンにまで、カメラのスイッチング操作をしているシーンを用意する気配りぶり!)
マクロスで体当たり(マクロスアタック)するシーンの伴奏のチャンチャンチャンチャン!(何と言う下手な説明だろう!)に合わせた止め絵演出。ここまでやってくれるのか!と感動。
目の前で大破壊が行われているのに、まったくたじろがず歌い続けるミンメイのプロフェッショナルなたたずまい。
そして一条輝の1人での特攻。最後はキチンと主人公に花を持たせるこの気配り!ニヤリ!
そして戦闘終了後のみんなの様子…(眠りこけるシャミーが可愛かった)
もうすべてに拍手!
ちなみに現在出回っているソフトでは、エンディングの「天使の絵の具」に合わせてミンメイのコンサートのシーンが描かれる。
私がリアルタイムで観に行った時は、このシーンは無く、黒バックにスタッフロールが流れるだけだった。
これは宇多丸さんが言うところのいわゆる「打ち上げ」があったほうがいいということで、追加されたのだろう。
確かにそのほうがいい。高揚感激しくアップ!
ミンメイと言えば、飯島真理さんが「愛・おぼえていますか」で「ザ・ベストテン」に何度も出演。
アニソンが「ザ・ベストテン」で流れるっていうのが、なんか凄く嬉しかった。
ちなみにこれ以降の「マクロス」は、私は逆にサッパリわからない!
「マクロス フロンティア」っていうのは…劇場版だけ観てもわかるんでしょうか…?
「幻魔大戦」
1983年 監督:りんたろう
とにかく大友克洋さんの絵のインパクトが強烈だった。
今までに自分が見たことがなかったタイプのキャラクターデザインに衝撃。
大友さんだけでなく、音楽にはプログレ界の大御所キース・エマーソンを、声優には江守徹、美輪明宏、原田知世などを起用したりと、角川映画らしい豪華な顔ぶれとなっている。
そして、一瞬で「あっ!このシーン、金田さんの作画だっ!」とわかってしまう、たまにその作品から浮いてしまうこともある凄い個性の持ち主、天才アニメーター金田伊功さんもガッツリと参加。
どんな監督にも、それがたとえ宮崎駿監督のような巨人の豪腕でも、けっして抑えることのできない強烈な才能がマグマのように噴き出し、炎の竜と化して暴れまくるのを、クライマックスの戦いでタップリと堪能することができる。
今回見直したら、エンドクレジットが「スペシャルアニメーション 金田伊功」となっていた。確かにスペシャルだ!
ただ、中盤に行われる幻魔の攻撃で世界が荒廃する様子が微妙な止め絵で唐突に表現され、状況がちょっと飲み込みにくかったり、宇宙の破壊者である幻魔が、お姉ちゃんのヒザ蹴りをくらってうずくまったり、子鹿をイジメたり、主人公の東丈(あずま じょう)が重度のシスコンの上、ビックリするぐらい何度も落ち込んで戦えなくなったりするので、正直、手放しでオススメ…っていうのは難しい作品かもしれない。
でも独特の雰囲気がどうしようもなく好きなのでどうしようもない!
丈が常に学ランで戦うとこもバビル2世チックでイカす!
「絶対零度!」とか必殺技をちゃんと叫んでくれるとこもアガる!
最初に出て来る「謎の占いオババ」もなんかすごいインパクトだった。
りんたろう監督作では、竜童組の音楽とそれに合わせた動きがカッコよすぎる、渡辺典子さんの主題歌がステキすぎる「カムイの剣」も激しくオススメ。作品の完成度としては、こちらのほうが上かもしれない。
「幻魔大戦」 「少年ケニヤ」 「カムイの剣」 「火の鳥」…
この頃の角川アニメ映画は熱かった。上映が近づくとテレビCMもバンバン流れて、「ワッショイ!お祭りがやってきたぞ感」がハンパなくてワクワクしたものです。 ワッショイ!