『さくら耳』について

みなさんは…
その…
もしかして『さくら耳』って当たり前にご存じでしょうか?
…と、こんな風にいきなりおっかなビックリお聞きしたのは次のようなワケがある。

 

自宅近辺に野良猫が何匹も生息しており、夜勤帰りなどにエサをやるのを楽しみにしているのだが、先日「妙なこと」に気づいた。

 

左の耳に注目

 

ある猫の耳がV字型に欠けており「ケンカしてケガでもしたのかな?」とずっと思っていた。
しかし、よく見ると、他の野良猫たちも、ほぼすべて同じように、耳がV字型に欠けているのである。

 

近所の野良猫たち

左耳が欠けている

この子も左耳が欠けている

 

「これは…なんか妙だ…」
私がやったエサを無邪気にむさぼる耳の欠けた猫たちを見つつ胸がザワザワ疑問を抱き、さっそく検索。
わかった。
これは不妊手術を済ませた猫に、そのしるしとして、耳にV字型の切り込みを入れたもの。
その形状が桜の花びらに似ていることから『さくら耳』といい、この処置がしてある野良たちのことを『さくら猫』というんだそうである。

 

 

「本人に許可なく勝手にパイプカットした上に耳までV字カット。あげくに『さくら耳』なんて可愛くネーミングするとは…」と唖然。
「この『さくら耳』、私のみ、なぜか初耳だっただけで、ずっと前からこの国で普通に行われてきたことで、他のみなさんは当たり前のこととして知っていたのだろうか…?」と茫然。
まるで、一見似ているが、まったく価値観の違う残酷道徳が普通にまかり通っているパラレルワールドに、知らぬ間に迷い込んでしまった藤子不二雄F先生のSF恐怖短編マンガの主人公になったような気分である。
冒頭でおそるおそるおっかなビックリ聞いたのはそのためである。
みなさんは…
その…
もしかして『さくら耳』って当たり前にご存じでしたでしょうか?
ワシャ全然知らなかった!ガーン!

 

もしかすると私と同じく「知らなった!残酷すぎる!こんなの猫好きの発想じゃない!」と感じた方もおられるかもしれない。
しかし、ことはそんな単純ではないらしい。

 

生み続け、増え続ける野良猫たちにより、ゴミ荒し、騒音、糞尿被害などの苦情が住民から寄せられれば、彼らは保健所に連れていかれる。
そして、一定期間で里親が見つからなければ殺処分される。
その方法は……その様子は……
取材をした方がショックでしゃがみこんでしまうほどの、残酷極まりない地獄絵図だそうである。↓(閲覧注意)

 

犬猫の殺処分の現場を見て、ショックでしゃがみ込んだ<写真家・尾崎たまきさんに聞く> | 女子SPA!
ネット上には猫や犬の可愛い動画があふれ、かつてないほど犬猫好きが増えているように見える昨今。でも一方で、年に約12万8000頭の犬猫が殺処分されている現状があります(平成25年度)……

 

しかし、猫の怨念がもしあるならば日本人全員呪い殺されててもおかしくないこの状況を変えるべく《公益社団法人 どうぶつ基金》が野良猫を捕獲して不妊手術をほどこす活動を開始。
処置済みのしるしとして、痛くないように麻酔中に耳をVの字にカット。そして再び彼らが住んでいた場所に還す。
「Trap(捕獲)」「Neuter(不妊手術)」「Return(元に戻す)」の頭文字を取って「さくらねこTNR活動」と名付け、コツコツと継続。
このバースコントロールにより、野良猫の数自体が減少。当然、保健所に連れて行かれる数も減少。
2005年には年間なんと22万匹(!)も行われていた殺処分を、2017年には3万5千匹まで、大幅に減らすことができたとのこと。そして目指すはもちろん「殺処分ゼロ」の世界である。
欠けた耳を見て簡単に「残酷」とか言っちゃダメなやつだった。
欠けた耳は、残酷なことから救おうとしたしるしだった。

 

野良猫の耳先がV字にカットされている理由とは? 猫が直面している現実に胸が痛む|FINDERS
耳のカットは不妊手術を受けた目印街中で見かける野良猫の中には、耳がV字に欠けているものがいる。実はこれ、ケンカによるケガ...

 

……とは言え、やはりどうも個人的には「不妊手術済みのしるしとして、猫の耳をV字にカットする」というのが、どうもシックリ入ってこない。
他に何かないだろうか?
手術を受けるのは子猫も多いとのこと。
成長しても体をしめつけない、なんかいい感じのやんわりストレッチ&じょうぶな素材で作られたリボン的なモノを、しるしとして付けるとかはどうだろう?難しいだろうか?

 

しかしそもそも、万物の霊長気取りで猫を勝手に子供ができぬ体にしたり、犬を鎖でつないだり、どう言い訳しても残酷極まりない仕打ちをしておいてヨシヨシ可愛がるなんて…
人間ってホント、寄生獣たちが首をかしげて伸ばして広げてパックンチョするのも当然なぐらい勝手。私も含めて。
でも、それでも、彼らにそばにいて欲しい。

 

 

そんなこんなで、罪深き私は、かれこれ半年以上エサを貢ぎ続けている猫ちゃんに未だに全然なついてもらえず、毎日こんな仕打ちを受けており手が傷だらけなのですが、キツネリスに噛みつかれたナウシカの顔でジッと耐え続けています。↓

 

(おわり)

 

広げたい、愛され猫のしるし。殺処分0の裏側を見逃さないために – どうぶつ基金