BUCK-TICKのボーカル、櫻井敦司さんが旅立たれてから、もう2年以上が経つ。
あっという間だ。信じられない。
訃報を告げるニュースに思わず声をあげたあの日をつい先日のように感じる。
BUCK-TICKの音楽的ブレインであるギターの今井寿さんはすぐにバンドの継続を宣言。
もう1人のギター星野英彦さんとのツインボーカルとなり、無限の可能性を秘めた新しいBUCK∞TICKのパレードが、私の住む広島にも来た。
24枚目のデビューアルバム『スブロサ』をかかげての全国ホールツアー『ナイショの薔薇の下』である。
『スブロサ』は名盤だった。
絶対にテレビなどでは演奏させてもらえそうにないナイスマニアックなインスト3曲を含む、全17曲という聴きごたえ満点のボリューム。
より多くの作詞作曲を手がけることとなった今井さんの「芸術は爆発だ!」する天才性。
美声にビックリ星野さんのボーカル。
そして、ジワリと温かく、ハッキリと感じるアルバム全体に宿った櫻井さんへの想い。
ロックでアートでエモーショナルな名盤だった。
広島公演のこの日は、奇しくも櫻井さんが旅立たれたあの日、10月19日であった。
夕方から泣き出した空の下、向かった会場は上野学園ホール。
前のアルバム『異空』のツアーで、私が最後に櫻井さんのお姿を実際に見たのと同じ場所である。
今は4人となったメンバーの皆さまがプリントされたB-T TRUCKを撮影し、ホールの中へ。
とても大きな会場だ。
「男も濡れる麗しい櫻井さんのお姿が見れない今となっては客席を埋めるのは、ひょっとして難しいのでは…?」などと大変失礼ながらちょっと心配だった。
しかしそれはアホな私の杞憂であり、ほぼ満であった。
キャリアの長いバンドだけに客層は幅広い。
老若男女、親子連れ、『十三階は月光』の世界から抜け出して来たようなゴリゴリのゴス系の方、髪立て期BUCK-TICKぐらいギンギンに派手なロック系の方、そして働いた後そのまま普通に仕事着で来てしまった地味の鏡のような私などなど。
バラエティーに富んだ皆様のお姿を見ているだけで何だか楽しい。
ステージは大きな薔薇が描かれた幕でセクシーに隠されている。
ナイショの薔薇の下、開幕をドキドキ待ちに待ったみんなに最初に届けられたのはやはりこの曲。今井さんのギターで始まり、メンバーの皆様が1人づつ演奏に加わっていく構成と、「俺たちは1人じゃない」という歌詞が那由多の涙を誘う『百万那由多ノ塵SCUM』であった。
演奏する4人を半円状に囲む電飾付きのメタリックな巨大チューブ。
バックには曲に合わせてめくるめくビジュアルを映し出すスクリーン。
今井さんと星野さんの雷神風神ボーカルツインズの前にハの字に並ぶ謎のメカ。
何というか、スチームパンクでレトロフューチャーでSFファンタジーな感じの、とにかくホールツアーらしい大がかりで凝ったステージだ。
今井さんの「さあ!アゲていこうか!」というMCで続いて披露されたのは『雷神 風神-レゾナンス』。
ハートに火をつけられたオーディエンスの大歓声で会場の盛り上がりは一気に頂点へRising!!
ちなみに本日のライブ、基本的には今井さんと星野さんがボーカルを担当する曲を交互に演奏する感じで進められて行った。ツインボーカルってにぎやかで面白い。
時にはギターから手を放し、歌に徹する今井さんと星野さんのお姿が何だか新鮮!
ポスターなどでも拝見していた、ファンタジーRPGみたいな謎の杖を今井さんは装備。
星野さんは、これまたよくわからん謎の棒で、よくわからん謎の楽器を「ガキーン!」と叩いておられた。
よくわからんがとにかく強い!かっこいい!
また、キャリアを重ねてますますチャイルディッシュなチャーミングさに磨きがかかっていく、スペイシー・ベースのユータさんが、以前よりもグイグイと積極的にステージ前に出てきておられた。
ユータさん必殺のニコニコスマイルにオーディエンスもニコニコ!
最年長としてここ最近はBUCK-TICKの屋台骨のような風格を備えてこられたドラムのヤガミトールさんはドッシリとしたたたずまいで職人のようにリズムを刻み演奏を支える。
そして、会場をゆるがすパワフルなビッグバン・ドラムソロも披露!
驚いたのは『神経質な階段』『ストレリチア』のインスト2曲ではステージへのライティングが消え、演奏するメンバーのお姿がほとんど見えなくなったことだ。
オーディエンスの目は当然スクリーンへ。
そこにはまるで、ダリとマグリットが共作した絵を元に、ロートレアモンが脚本を書き、ブニュエルが監督したような『アンダルシアの犬』も尻尾を巻くシュールな映像作品が映し出され、美術館にトランスフォームした上野学園ホールに芸術の時間が流れていた。BUCK∞️TICKはバクハツだ!
このスクリーンはライブを通してずっと大活躍。
終盤ではレトロなピコピコサウンドとドット文字で「タノシンデマスカ?」と問いかけてきたあと、そのままメンバー紹介も担当。
このおちゃめな演出、タノシンデマス!
今井さんは、ちわきまゆみさんのラジオで「しゃべるの苦手だと思ってたけど、そんなこと言ってる場合じゃないなと思って」と言っておられたが、なるほどその通り。
『夢遊猫』の前には「ニャオス!」
『ガブリエルのラッパ』の前には「天使がラッパを吹いている!」などなど、歌と演奏はもちろんアクティブに次々と繰り出すMCでもライブをグングン盛り上げておられた。
そしてアンコール1曲目では「さあ始めようか!新しいロックンロール!」と叫んで待望の新曲『渋谷ハリアッパ!』をaction!
続いて「さあ!もっとアゲていこうか!」と、うれし懐かしのナンバー『Baby, I want you』を今井ボーカルバージョンで披露!会場をダンスホールに変える!
そして、最後。
「みんな知ってると思うけど今日は…」と切り出す今井さん。
「ああ…そうか…やっぱりそりゃあ…それに触れるよね…」と、静かな緊張に包まれる会場。
「今日は…俺の誕生日の前の前の日です!」
放り込まれた、あまりにもらしいイタズラ今井フェイクに、固唾を飲んでたオーディエンス全員、吉本新喜劇の動きでズッコケ!「湿っぽいのは無し!」ということなのだろう。
見事な緊張と緩和ですっかりなごまされたみんなに「あっちゃんも遊びに来ていると思います。ラスト1曲、この歌をみんなで歌ってしめようか!」と呼びかけ、会場一体大合唱したのは、櫻井さん作詞の『LOVE ME』であった。
ちなみに寡黙キャラなイメージの星野さんも最後に「よし。パレードを続けよう。」と静かに力強く宣言。
ユータさんはステージからはける際、「いつもみんなにパワーもらってます。あっちゃんもいつも見にきてくれてると思います。広島だーい好き❤︎また来るじゃけえ!ん?合ってる?(お客さんに聞いて)あ!また来るんじゃけえ!」と、Hiroshima Babiesをぶち喜ばせて去っていかれた。また来てくれるのを待っとるんじゃけえ!
終演後、私の近くの席のご婦人が号泣しておられ、お連れの方に優しく肩を叩かれているのを見た。
泣いておられた理由は定かではない。しかしおそらく櫻井さんへの想いが涙となってあふれてしまったのではないだろうか?
正直、私も櫻井さんのことを観たり考えたりすると、まだ胸が苦しくなる時がある。「ああ…もういないのか…」と。
しかし、今井さんが「シュレーディンガーの猫」や「量子の海」を引用して櫻井さんのことについて時々語っておられた通り「櫻井さんは永遠にいる」とも言えるのではないか?
肉体を捨て、新しい形となり、みんなの心の中に、この宇宙に、ずっといる。そんな無限夢幻な存在になられたのではないか?そう考えるようにもなってきた。
何だかリアル夢幻紳士な佇まいをしておられた櫻井さんっぽいではないか。
街灯に照らされた銀色の雨が降る帰り道。
そんなことを思いながら夜空を見上げた。
そこにいるのか?
眩しくて視えない!
■セットリスト(2025年10月19日 広島 上野学園ホール)
- 百万那由他ノ塵SCUM
- 雷神 風神-レゾナンス
- 夢遊猫 SLEEP WALK
- スブロサ SUBROSA
- From Now On
- Rezisto
- ストレリチア
- 冥王星で死ね
- paradeno mori
- 遊星通信
- 絶望という名の君へ
- 神経質な階段
- プシュケーPSYCHE
- ガブリエルのラッパ
- 黄昏のハウリング
※アンコール
- 渋谷ハリアッパ!
- 風のプロローグ
- TIKI TIKI BOOM
- Baby I want you
- LOVE ME
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