闇を抱えているアーティストに魅かれる。
音楽なら Coccoさん、戸川純さん、筋肉少女帯、女王蜂、BUCK-TICK、キングクリムゾン、バウハウス、ジョイディヴィジョン、ニルヴァーナなどなど…
逆に、やたらと人生に肯定的で明るく、ポジティブな歌はどうも苦手である。
翼を広げて、希望の空へ
涙はもうFLY AWAY!
夢は必ず叶うわ、あきらめないで
さあ、がんばって、私がいつも見守ってるわ、I LOVE YOU FOREVER~♪
…とか歌われても、全然がんばる気にならんし、信用ならん。
こちとら霊長類のオッサンだから翼もないし、夢も叶っとらんし、フォーエバーラブを誓った相手に今まで散々フラれまくっとるからな!
そのへん、どうなんだ!なぜなんだ!涙はもうFLY AWAY!
そんなこんなで今回は自分の好きなミュージシャンの中から、BUCK-TICKについて書かせて頂こうと思う。
BUCK-TICK
1987年のメジャーデビュー以降、メンバーチェンジ無しで、今も精力的に活動を続ける日本ロック界の重鎮。
大御所にして最先端。
ひょっとすると若いアニメファンの方には「屍鬼の主題歌を歌ってたバンド」という認識かもしれない。
今も熱狂的な支持を得ているカリスマバンドだが、80年代後半に起こったバンドブームの時の人気は凄まじかった。
音楽雑誌の表紙のほとんどが、BUCK-TICKで埋められていることも多かった。
私も夢中になった。
学校で、下敷きをガーッと頭頂部にこすりつけては、↓
…と活動初期の髪を立てていたBUCK-TICKの、凄まじくクオリティの低いモノマネを、頼まれてもいないのに、たびたび披露。
バカ友たちの爆笑と、女子のみなさんの嘲笑を頂戴したものである。
また、BUCK-TICKがテレビ出演すると必ずビデオに録画。
病気のように繰り返し何度も見た。
大ヒット曲「悪の華」のタイトルは、ボードレールの「悪の華」という詩集からとったものであると聞くと、さっそく本屋で購入。
おそらくボードレールの「悪の華」というと、最近は押見修造先生のマンガで知る方も多いのだろう。
だが、80年代に青春を送った人間は、BUCK-TICK経由で、この詩人を知った人も多かったのではないだろうか?
私も、押見先生のマンガの主人公のように、この詩集をいつもカバンに入れて持ち歩いた。
授業の合間、図書室、西日差す夕方の公園…
時間を見つけては、そのアンティークな表紙の岩波文庫を開き、偉大な詩人の紡ぎ出す背徳の美学の世界に目を落とした。
時々「何、読んでるの?」と聞いてくるクラスメイトに
「ああ、ボードレールの悪の華っていう詩集だよ。この世の悪徳のすべてがこの詩の中に表現されていると言われてるんだよ。確かにこりゃ凄いね。あの芥川龍之介が、人生は一行のボードレールにも若(し)かない…って言ったのも納得したよ。」
と感想を述べた。
もちろん詩の意味はサッパリわからなかった。
本当の感想は
「漢字が多くてバリ読みにくいのう。こりゃもう読むのをあきらめる若かない。」
というものだった。
また、同曲のイメージは、ゴダールの映画「気狂いピエロ」にインスパイアされたものだと聞くと、さっそくビデオをレンタル。
鑑賞の翌日、クラスメイトに
「昨夜は、気狂いピエロっていうフランス映画を観たよ。やっぱりフランス映画は屈折してていいね。ハリウッド映画みたいに単純な勧善懲悪じゃないからね。昨日の映画も凄く良かった。特にラスト。破滅の美学と生への執着が、鮮烈な映像美で見事に表現されていたよ。」
と感想を話した。
もちろん映画の意味はサッパリわからなかった。
本当の感想は
「主演の俳優さんは、鼻がブチでかいのう。」
というものであった。
とにかく夢中でBUCK-TICKを追いかけた。
このバンドと共に、80年代の青い春を駆け抜けたのだった。
その頃は、「歳をとったらBUCK-TICKとか聞かなくなるのだろうか?」と思っていた。
しかし、今も変わらず好きだ。
BUCK-TICKの作る世界「夢見る宇宙」に夢中である。
私は、BUCK-TICKの何に魅かれるのだろう?
音作りの中心人物である今井寿さんの、天才的な楽曲、奇抜なパフォーマンス。
ギター、星野英彦さんの優しい人柄がにじみ出ているような曲とたたずまい。
ベース、樋口豊さんの人なつっこい笑顔。
ドラム、ヤガミトールさんのドラミングに対する謙虚な姿勢などなど…
BUCK-TICKの魅力はたくさんあると思う。
しかし、中でもやはり多くのファンを魅了してやまないのは、ボーカル、櫻井敦司さんのかっこよさだろう。 ↓
私のようなBUCK-TICKファンにとっては、「サクライさん」というとミスチルではなく、BUCK-TICKの「櫻井さん」。「あっちゃん」というと元AKBのではなく、BUCK-TICKの「あっちゃん」なのである。
櫻井さんが、日本ロック史上、最高のクールビューティーであることは間違いないと思う。
お顔の美しさ、麗しい容姿は言うまでもない。
声の良さ、歌の表現力の豊かさ、ステージ上での魅惑的な体の動き、仕草…
何ていうか…スターなのである。
神がかり的にかっこいい。美しい。
ステージ上ではない普段の、繊細でシャイで礼儀正しい感じも、ズルいぐらいにチャーミング。
活動初期の「キレイなお兄さん」だった櫻井さんも素敵だ。
しかし最近は、美しさに加えて、大人の思慮弁別、思いやり、優しさ、ダンディーさが加わりエライことに。
ある意味、今が一番かっこいいのではないだろうか?
とにかくこの方は、フェロモンがハンパない。
櫻井さんは高校の修学旅行に行った際、地元の占い師に「あんたは将来、女で苦労するよ」と言われ、後に「ああ、当たっていたかも…」と思われたそうだ。
昔、好きだった女の子に手相占いをしてもらう機会があり、その子の手のぬくもりを感じてドキドキしながら結果を待っていると、「あれ?あんた生命線が切れとるよ」と、好美のぼる先生のホラーマンガのタイトルみたいなことを言われた私とはエライ違いである(あたりまえだが)
また、櫻井さんは、デビュー前、婦人靴店でアルバイトをなさっていた時、お店の人に「ちょっと店の前で立ってて」と言われたそうだ。
櫻井さんがそうすることで、女性客が寄ってくるからである。
昔、交通誘導のアルバイトをしていた時、まったく渋滞が解消できずに車の波の中でオロオロしていると、業を煮やした先輩に
「もういい!てめえはそこで、一生カカシみたいに突っ立ってろ!」
と破壊力満点の暴言を吐かれた私とはエライ違いである(あたりまえだが)
さて、ここまで読んで頂き、「じゃあ、BUCK-TICK聞いてみるか」と思ってくださった方もおられるかもしれない。
しかし、そういう方に、どのアルバムをオススメするか?
これが難しい。
デビュー当時と今では、変わらぬ魅力もあれど、しかし、凄まじい進化をとげているからだ。
例えば、初期に「MOON LIGHT」という曲がある。
サビの歌詞はこうだ。
罪な悪魔さ You are special!
Please hold me love me kiss me
止まらない I’m fall in love
………
英語を習いたての中学生が書いたような詩だと思われた方もいるだろう。
私もちょっとそう思う。
でも、これはこれでいいのである!
櫻井さんが歌うと何かカワイイし!
冒頭でおのれが否定しとった歌と同じようなもんやんけ!と思われた方もいるだろう。
私もだいぶそう思う。
でも、いいったらいいの!
BUCK-TICKへの愛が止まらない I’m fall in love!
活動期間を経るにしたがい、櫻井さんの歌詞はダークで幻想的な色合いを深めていくことになる。
自分なりに考えて、下記の3枚のアルバムをオススメさせて頂く。
■SEXUAL XXXXX!
メジャーデビューアルバム。
BUCK-TICKというとダークなイメージを持たれてる方も多いと思う。
そういう方は、「え?BUCK-TICKってこんなにポップなの?」と椅子からズリ落ちること間違いなしの1枚。
とにかく聞きやすい。
でも、今井さんの詩は、実はこの頃から、かなり奇妙だ。
■殺シノ調べ
6枚目のアルバム。
セルフカバーアルバムなので、「JUST ONE MORE KISS」「悪の華」「スピード」「JUPITER」などの大ヒットシングルも収録されており、お得。
聞いた時、原曲のあまりの大胆なアレンジにビックリ仰天。詰め込まれたアイディアに驚嘆。
今井さんがご自身の天才に目覚めて、夢中で思いっきり音をいじくりまわしたような印象を受けた。
櫻井さんの歌の表現力の進化にも驚いた。
私は、聞き込んだ回数だとこのアルバムが一番だと思う。
ただ、原曲を知っていたほうが、より楽しめるかもしれない。
■RAZZLE DAZZLE
16枚目のアルバム。
これは、文句無しの名盤。
ちなみに私は、7曲目の「BOLERO」を聞くと、どうしても涙腺決壊してしまう。
アニメ「屍鬼」の主題歌「くちづけ」「月下麗人」も収録。
ただのタイアップとは違い、作品のイメージにピッタリ。
BUCK-TICKファンもアニメファンも大満足の名曲だったと思う。
先頃、デビュー25周年を記念して、ドキュメンタリー映画「劇場版BUCK-TICK~バクチク現象~Ⅰ・Ⅱ」が公開された。
レコーディング、舞台袖、リハーサルなど、普段は見れない映像が満載で大満足。
楽屋でストレッチしながら、亡くなられたお母様の思い出を話す櫻井さんに涙。
Ⅰのテーマ曲「LOVE PARADE」は、星野さんらしい優しさあふれるナンバー。
Ⅱのテーマ曲「STEPPERS -PARADE-」は、ハイになって大股でガッシガッシと歩きたくなるような名曲。作曲した今井さんは、やっぱり天才だと思った。
そして映画は、武道館の幕が上がり、名曲「エリーゼのために」のイントロが流れて終了。
これからもBUCK-TICKが精力的に活動していくことを、確信できるような幕切れであった。
闇を行くこの幸福なパレードは、月明かりに照らされて、まだ続くのだ。
(おわり)
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