「永遠の0」を観に行きました

永遠の0
映画「永遠の0」が大ヒット!
観客の涙腺を直撃し、日本中のあちこちでドバーッ!と感動の涙をあふれさせているらしい。

 

ここは、ひとつ私も!
普段は「武器人間」とか「キラーズ」とか、頭のおかしな人がまごころをこめて作った作品ばかりにフラフラ食いついていく頭のおかしな私も!
たまにはメジャー感動大作に足を運び、ドバーッ!と泣いて帰るとするか!

 

…というわけで休日、トコトコと1人で劇場へ。
タイアップ感がハンパないサザンの主題歌が流れるCMをふいに思い出し、一抹の不安を感じつつもチケットを購入。

 

上映時間まで、まだ30分ほどあったため、以前から苦しんでいる頻尿にそなえてトイレへ。
個室に入り、ついでにウンチもしていると、チビッ子たちが入ってきたらしく、ドアの向こうが何やらガヤガヤと騒がしい。
耳をすませば
「人間 ウンコ チンコ! アホ バカ シッコ!
人間 ウンコ チンコ! アホ バカ シッコ!」
と、日本の将来を担う次世代の若者たちの歌声。

 

「ウンコ」「チンコ」などの「カレー」と並ぶ子供の大好物をストレートに並べつつ、「人間」というグローバルなキーワードをあえて頭に持ってきたパワフルなナンバー。
なかなかの名曲であった。

 

「プププ~!
子供ってホント下ネタが好きだな~!なんか微妙に韻を踏んでるし!
バカだな~!プププ~!」
フリチンでプルプル笑いをかみ殺していると、不意に違和感を感じた。
下ネタ少年合唱団の気配が、だんだんとコチラに近づいてきたのである。
そして、あっという間に私の入っている個室の前に。
ギョッとする私と薄いドア1枚を隔てた、まさに目の前で
「人間 ウンコ チンコ! アホ バカ シッコ!
人間 ウンコ チンコ! アホ バカ シッコ!」
と狂気の大合唱が始まった。

 

戦慄が走った。
理解した。
おそらく彼らの中にウンチをしたい子がいるのだろう。
苦しみを抱えてさまよい、やっとこのオアシスにたどり着いたのだろう。
だが、そこにはイマイマしい先客がいた。
そう!
彼らの歌は、たった1つしかない個室トイレを占領している私に向けて発せられたものだったのである!

 

チビちゃんたちよ!
「人間 ウンコ チンコ」では、何だか人間ですらなくなってしまう!
せめて「ウンコ チンコ人間」にしてくれ!

 

フリチンでガタガタ震える私。
募る恐怖に比例してギャングスターたちの凶暴なライムは、ますますヒートアップ。
「人間 ウンコ チンコ! アホ バカ シッコ!
人間 ウンコ チンコ! アホ バカ シッコ!」
ああ…
どうしよう…
あと数分で「永遠の0」が始まってしまう。
しかし今、出て行ったら ↓

恥じらいのウンコチンコ人間

…と嘲笑され、袋叩きにされた上で、クンロク入れられるのは必至。
それは避けねばならん。
このままやり過ごせば、きっとすぐ諦めて他のトイレを探すなり何なりするだろう…
そうだ!
彼らだって、何か映画を観にきたのかもしれない。
ならば、そんなに長く私にかまってもいられないはずだ…
ドアの外で吹き荒れるディスの嵐の中、耳をふさぎ、息を殺し、身じろぎ1つせず、半グレ集団が一刻も早く立ち去ってくれるのを、ただひたすら祈った…
きっとすぐ解放される…
救われる…
神はいる…
……

 

広島ヤクザたちは諦めて立ち去ったようだ。
戻ってくる可能性なども考慮し、 完全に安全を確信してからヨロヨロとトイレから這い出した。
日はトップリと暮れ、「永遠の0」の上映時間はちょうど終わり、購入したチケットはタダの紙クズと化していた。
やはり名作だったのだろう。劇場から出て来るお客さんの中には、ハンカチを目に押し当てている方もたくさんおられた。
私も泣いて帰った。

(おわり)