初めての手術 ALTA療法 その⑤  手術が終わって

その➃はこちら

看護婦さんに押されて、車椅子で病室に戻る。
ベッドに寝かせて頂き、止血剤と鎮痛剤の点滴開始。
「終了するまで何もしないで下さい。腕を動かさないほうが良いので、読書も携帯ゲームもダメ」とのこと。

 

何もできず、ひたすらボーっと点滴が落ちていくのを眺める。
「プレステ3を買うためにコツコツ貯めた、なけなしの貯金も、今回の入院で消し飛んでしまうだろう。もう痔はこりごり。やはりお尻は常にケアが大切。いつかまたお金が貯まったら、プレステ3はやめて、まずはウォシュレットを買おう…」と決意。
夢の購入アイテムが「ゲーム機」から「便座」に変わってしまったことに一抹の悲しみを覚えつつ、点滴を眺める。

 

ドアが開く。
看護婦さんに、この果てしなき点滴はいつごろ終わるのか聞いてみよう…と思って顔を向けると ↓

 

父…

 

なぜか父が立っていた。
病院は近所なので、買い物帰りに寄ってみたとのこと。
「ぶち痛いはずの麻酔注射は、蚊が刺したほどにも感じなかった」と父情報がガセであったこと、手術は無事に終わったことなどを報告。
「ほうか…」と父は帰っていった。

 

午後1時ごろ。
長い点滴も終わる。
麻酔で痺れていた下半身にも感覚が戻ってくる。
看護婦さんから「オムツはもう捨てていい」とハードボイルド小説の主人公のような言葉を頂く。
なにげにフィットしつつあり、変な名残惜しさを覚えながらも、平凡な自分の下着にはきかえる。

 

夜の7時。
看護婦さんが夕飯の弁当を持ってきてくださる。
それにしても、最初のウンチはいつ出るのだろう?やはり術後、初めての排便は痛く、出血もあるのではないだろうか?…と食事を胃袋に入れながら、出す時のことを心配する。
そして何よりも、せっかく手術をしたのに、治っていなかったら?
倒しても倒しても現れる「ドラクエのマドハンド」のように、相変わらずイボが飛び出たらどうしよう?
こなれた感じで再手術か?
そんな経験値&スキルアップはいらん!…などと考えつつ食事を終え、いつの間にか眠る。

 

朝9時。
先生の回診。
異常無し。
トイレも入浴も普通に可能。
2日間は家で安静に。
そして、今後2ヶ月間は、毎週一度、術後の経過を見るため通院の必要ありとのこと。
先生と看護婦さんにお礼。
朝の10時には荷物をまとめてアッサリ退院となった。

 

帰宅。
「トイレを見てみんさい」と父。
のぞいて見ると、なんと憧れのウォシュレットが!
昨日、お見舞いに来た後、近所の家電量販店で購入、取り付けも自分でやったとのこと。
なけなしの年金を使わせて申し訳ない。ひたすら感謝。

 

…とその時!
術後初めての便意と共に、直腸付近に刺すような、謎の猛烈な痛みが!
「ぬおお!」と悶絶しながらトイレへ駆け込み、恐れを感じつつも用を足す。
排便と共に、先ほどの刺すような痛みは消えていく。
出血はまったく無い。
そして………飛び出さない!
用を足した後は、いつも飛び出していた、あのイボが!
作業終了の確認ボタンのように、押し込むのが普通になっていたあの憎き肉塊が!
まったく飛び出さない!
驚くべきALTA療法!すごいぞALTA療法!
そうだった!飛び出さないのが普通だった!この感じスッカリ忘れていた!
こんなことなら、もっと早く手術を受けてたら良かった。
青春を素敵な女性とではなく、変なイボと共に過ごし、無駄にしていた。
いや、今からでも遅くない!オッサンだけど遅くないったら遅くない!
飛び出さないって素晴らしい!飛び出せ青春!

 

手術をした3日後には、仕事に復帰。
上司も喜んでくださった。

 

ちなみに便意と共に感じた「謎の刺すような痛み」は、手術の傷が「大」によって刺激されたものだったらしく、日々の経過と共に無くなった。
かかった費用は、入院、手術代すべて込みで「¥42,390-」なり。
しかも、毎月払っていた保険(県民共済)を申請したところ、問題なく適用。
1週間後には全額戻ってきたのでビックリ&ニッコリ!良かった!

 

手術後、およそ2ヶ月。
経過は順調。
「飛び出さない普通の幸せ」という、駄目なハリウッド映画のタイトルみたいな幸せを噛み締めている。
5回に分けての長文になってしまった「ALTA療法」のレポートもこれで終了とさせて頂く。
少しでも、同じ病に苦しむ人の参考になれば(あんまりならないかもしれませんが)幸いである。
(痔・エンド…)