※この記事は、真鍋昌平先生の「闇金ウシジマくん」のネタバレを含みます。ご了承願います。
今さら私なんぞが言うまでもない。
だが言う。
「闇金ウシジマくん」は本当にすごい。
ウシジマくんの営む闇金業は汚い。
しかしウシジマくんに金を借りにくる人間たちも、けしてキレイではない。
「自分はビッグになる特別な人間」だと信じ、周りの人間を小バカにし、そのくせ努力はせず、ちっぽけな自分や現実から目をそむけ続け、無駄に歳だけ重ねていき、しだいに自分以下の人間の存在に安心を求めるようになるバイトくん。
いい歳こいて定職につかず実家に寄生。自分を養ってくれている親にはつらくあたるくせに外の世界ではオドオド。低賃金の派遣肉体労働で汗と屈辱にまみれ、たまりまくった不満をネットでぶちまけるフリーターくん。
「これはまるで私だ!」とチクリグサリ身につまされた方も多いはずだ。私だ。
そして、そんな「私に似た人たち」が、ちょっとした出来心やハズミで闇の世界へ足を踏み入れてしまったらもう!地獄にはまってさあ大変!
もがけどあがけど抜け出せず、老若男女問わず徹底的に追い込まれ、汚れ、堕ちていく。そこに容赦という言葉は存在しない。
地獄の底に堕ちる彼らに、我が身の行く末を重ね見て、激しくドンヨリした方も多いはずだ。私だ。
以前、「北九州・連続監禁殺人事件をルポした、読む地獄『消された一家』を、もしも『冷たい熱帯魚』の園子温監督や『凶悪』の白石和彌監督で映画化したら…
こりゃ、アレクサンドル・アジャやイーライ・ロスも真っ青のイヤ恐い作品がきっとできるんよ!どうしよう!?バリこわい!」と、勝手に想像して震え上がっていた。
しかし「闇金ウシジマくん」が「洗脳くん」というエピソードでもうやってしまった。
そして、あれ以上のエクストリームな容赦ない描写というのは、ちょっともう無理ではないだろうか?「どうしよう!?バリこわい!」と震え上がった。凄まじかった。
そして、この作品がすごいのは、ただこの世の地獄を見せるだけではないところだ。
弱く、ずるく、だらしなく、最低だと思っていた人間たち。
しかし彼らが、堕ちに堕ちた最期で、わずかに残った人としての誇りや意地や優しさを、ふりしぼるように命がけで見せる!
その姿に心底感動させられるのだ。
「フリーターくん」のラスト。自業自得でドン底まで堕ちた男が、母親を守るため、ガタガタ震えながらも必死でウシジマくんにタンカを切るシーン。
彼も泣き、守られた母親も泣き、私も号泣した。
「闇金ウシジマくん」を読むたび「すごい!むごい!こわい!でもやめられない!」と思う。
そして「大人だなあ…シブい!」と思う。
描きたい!私も!「大人チックな激シブいマンガ」を!
そこで、自分なりに研究をしてみた。
ちょっと下の絵を見て頂きたい。(©真鍋昌平 小学館「闇金ウシジマくん」より抜粋)
どれも「闇金ウシジマくん」のエピソードの激シブいラストだ。
ここにある共通点にお気づきだろうか?
そう!「大きなコマ、緻密な街の絵、そこにセリフがかぶっている」という点だ。
私はこの点に着目。「ウシジマくん」だけでなく、尊敬する他の先生がたのシブいラストシーンを持つマンガも研究。次のような仮説にたどりついた。
見開きや1ページ丸ごと使った大ゴマに
写真などから起こした緻密な風景を描き
そこに「なんかソレっぽいセリフ」をかぶせる!
すると私なんかにも「なんかイイ感じなラストシーン」が作れるのではないか?
…というモノだ。
このワクワク仮説を証明すべく、次のような絵を用意してみた。
太陽に照らされた街の写真を自分で撮り、そこから絵を起こそう…としたのだが、天気が「サザエさんが終わったぐらいの日曜夜の私の心」のようにゲロ曇りだったので、素材サイトの写真を使わせて頂き、そこから絵を起こしてみた。
さて、仮説の通りここに「なんかソレっぽいセリフ」をかぶせてみよう。↓
どうであろうか?「なんかイイ感じなラストシーン」に見えないだろうか?なかなかいいぞ。もっと試してみよう。↓
いいぞ、いいぞ、グヘヘグヒヒ。もっと。もっとだ。↓
イイ!イイ!ウヘヘ!グヒヒ!ウヘヘグヒヒヒィーッ! ↓
ウホホ!ホホーッ!フヘヘウヒハ!ウヒョホホホホホーッ!
ホホホーッ!ウヘヘホホホーッ!ホヒハヒヒホーッ!ホホホーッ!
…ハッ!
ハァ…ハァ…
一瞬、自分を見失ってしまったがどうであろうか?
そう!ここに我が仮説は証明された。
見開きや1ページ丸ごと使った大ゴマに
写真などから起こした緻密な風景を描き
そこに「なんかソレっぽいセリフ」をかぶせる!
すると私なんかにも「なんかイイ感じなラストシーン」が作れる!
映画におけるモンタージュ理論や小中理論のように、このメソッドを使えば!
ネタに困ったらすぐウンコチンコな私でも!大人チックに激シブい、なんかイイ感じなラストシーンがあるマンガを作れるのだ。ニヤリ!
でも、まあラストシーンだけ作れても…↓
(おわり)