ワシの犯した罪と罰

かぐや姫の物語

 

先日、高畑勲監督の「かぐや姫の物語」を観た。
作品のキャッチコピーは「姫の犯した罪と罰」である。
「ジブリでかぐや姫」だからといって、けして子供向けではなく、大人の鑑賞にも堪えうる難しいテーマに踏み込んだ作品であることを予感させる。

 

いい年こいてシッコとかオナラとか幼稚なことばかり言ってられない。
たまにはキチンとした映画評論を書いて、内に秘めたるインテリジェンスを披露しよう。
宇多丸さんや町山智浩さんもビックリの、微細にわたり、かつ核心を突く批評をビシリと決めてやる。
腕を振るうには、この「アニメ界の巨匠の14年ぶりの新作」こそふさわしい。
評論のしがいがあるというもの。相手に取って不足はない!…と考え映画館へ。

 

鑑賞後、無表情で小首を傾けたまま帰宅。
「かぐや姫はどうじゃった?」
と父。
私の回答は
「なんか……まあストーリーはかぐや姫なんじゃけど………かぐや姫が……なんか地上で生きることの素晴らしさに目覚めて……絵がなんか普通のアニメと違っとって………ほいでなんじゃかんじゃで月に帰ってしもーたよ。」
という、小学生もビックリの恐ろしくボンヤリしたものであった。
聞かされた父も
「ほうか……」
とボンヤリした顔をしていた。

 

その晩、ネットで、この作品をご覧になった方々の感想を読ませて頂いた。
みなさん、微細にわたり、かつ核心を突く深い考察をなさっておられた。
私は自分の頭の悪さを改めて思い知り、真夜中ヒザを抱えて転げまわることに。

 

しまった!
「いつもシッコとかオナラとか書いてる人間がいきなり、下ネタの一切無い真面目な文章を披露したら、きっとカッチョいいぞ。グフグフ。
特に女性の方は、ギャップ萌えで胸がキュンキュンしちゃうぞ。ゲヘゲヘゲヘヘ。」
などとヨコシマなことを考えた罰が当たった!
姫の犯した罪と罰はよくわからんかったが、ワシの犯した罪と罰はよくわかった!

 

そういえば、ジブリつながりで思い出した。
中学の頃、宮崎駿監督のアニメーション「風の谷のナウシカ」について、ボンクラ仲間たちとワイワイ話していた時のことである。
突然、N君が、ポッと顔を赤らめ、恥ずかしそうにうつむき、こう言った。
「ナウシカ…確かにいい映画じゃったけど…でも…ナウシカってエロい…」
ん?
私も含め、他のみんなはキョトン。
ナウシカがエロい?
どこが?
不思議に思い作品を思い返してみた。

 

う~ん…
ナウシカがテトを胸の中に隠すシーン?
それとも、王蟲の触手にナウシカがからめ取られるシーン?
しかし、どうもピンと来ない。
ピンとならない。
宮崎駿監督のナウシカの描き方はとても上品で、エロさは感じない。

 

まさか…!
人には色々な性癖がある…
N君、ひょっとして「巨神兵のドロドログチョグチョ」を観てなんか変な気分に目覚めてしまったんじゃ…?

 

N君…
メドゥーサのような天然パーマの私と違い、サラサラヘアーで「天使の輪」がまぶしいN君…
しずかちゃんの入浴シーンがあるだけで「ドラえもん」のことを「エロマンガ」と呼んでいたピュアなN君が、遠くへ行ってしまう…

 

異常性愛の世界に踏み出そうとしているN君を引き戻すべく「いったいナウシカのどこがエロいのか?」問いただしてみた。
モジモジうつむいていたN君は、ついに恥ずかしさを振り切るように、こう言った。
「だって…だって…」 ↓

 

Nくんの中のナウシカ

 

詳しく聞いてみると、N君は、ナウシカの太ももの部分を「生足」だと勘違いしており ↓

 

ナウシカ

 

メーヴェに乗ってるこのシーンなどは ↓

 

はいてるってば!

 

「ジブリヒロインまさかのノーパン尻丸出しっ!」だと思っていたらしい。

 

違う違う。んなワケない。
あれは「肌色っぽいズボン的な物」をちゃんとはいていると説明。
「え?ほうじゃったん?」
とN君は驚き、そして、少し残念そうな顔をした。
夢を奪って申し訳ないことをしたかもしれない。

 

この文章を書くに当たり、「もしや…?」と思い「ナウシカ ノーパン」のステキ過ぎる組み合わせのワードでネット検索。
いた。
たくさん。
N君の他にも。
ナウシカがノーパンだと思っていた人や、今もそう思っている人たちが。
中にはYahoo!知恵袋で
「ナウシカって何でノーパンなんですか?」
と相談しているサラリーマンの方も。

 

高齢化社会…年金制度の破綻…増税…就職難…
世界には、暗澹たる気持ちになるような問題が山積みで、たずねたいこと、相談すべきことはたくさんあるはず。
それなのにこの
「ナウシカって何でノーパンなんですかっ!?」
という相談。
イカす。
私もそういう人間でありたい!
たとえ、月世界の高みから見れば、この地上が流刑地のような地獄であったとしても!
お迎えが来るその日まで!

(おわり)