前回も少し書かせて頂いたが、私は天然パーマ。
このグルグル属性は、本当に困ることが多い。
まず、天パーの人間の毛髪は、ハリやコシがないことが多い。
弱い。
そのくせ、天然のウェーブに関しては、意固地に守ろうとする。
だから髪型のセットが大変。
ドライヤーとクシの二刀流で、メイルシュトロームのようにウズ巻く毛髪の流れに必死で抗い、髪型をセット。
鏡の前で、何とか、おのれのナルシシズムと折り合いをつけたとする。
しかし、その労作はしょせん、中2男子の1人エッチ禁止の決意のようなもの。
ちょっとした刺激で、もろくも崩れ去ってしまう。
前回、書かせて頂いた通り、ヘルメットなどをかぶったりしたら、もうダメ。
運動して汗をかいたり、雨に濡れたりしてもダメ。
あっという間に、うずまき、はりつき、はねあがる。
寝起きよりもまだヒドイ、みっともない髪形になってしまう。
シャワーをザップリと浴びて、ドライヤーでやり直さない限り、直らない。
それに、天パーの人間は、ハゲることが多い。
昔、誰か物知り博士的な人が言っていたのだが、ハゲる人間は、次のような共通項があるそうだ。
1 天然パーマ
2 首から下は無駄に毛深い
3 親とか親戚がハゲている
私は3項目、すべてビンゴ!
うれしくない。
前述したとおり、天然パーマ。
そして、首から下は無駄に毛深い。
足など、かなりのジャングルである。
熱帯雨林のように暑苦しい。
以前、血を吸いにきた蚊が、乱立する怪奇な食虫植物のごとき我がスネ毛にからみ取られ、抜け出せなくなっていることがあった。
かわいそうである。蚊も私も。
そして、親も親戚もハゲている。
中学の頃、あまり付き合いのなかった親戚の葬式に出た。
式場で、ガクゼンとした。
自分の父はもちろん、親戚の男は全員ピッカピカ!なのである。
どれが、坊さんかわからないぐらいハゲ集合!
おごそかに式が進み、故人をしのんで皆がむせび泣く中 ↓
…と、私だけは、おのれの未来の「まぶしいハゲ姿」を想い、絶望の涙を流したのであった。
不謹慎きわまりない。
バチがあたってハゲてしまえばよろしい。
さて、ハゲ話はともかく、これを書いている今、また台風が近づいてきている。
天然パーマの人間は、雨天が憂鬱である。
髪の毛が湿気を含み、いつも以上にグルグルと激しくトグロを巻き始めるからだ。
くりぃむしちゅーの上田さんが、ご自身の天パーのことをよく「バッハ!」とイジられているのをテレビでお見かけする。
しかし「バッハ」ならまだ良い。
偉大な音楽家だ。
前回も書かせて頂いたが、私なんて「メデューサのスエ」と呼ばれた。
怪物だ。昔のギリシャの。髪の毛がグルグルトグロ巻く蛇で、目を見たら石になるバケモンだ。
そういえば、あれは確か中学2年の時だったろうか。
湿気の多い曇天の日。
私の頭は、激しくウズ巻いていた。
校庭での朝礼が終わり、みんな教室に戻ろうとした時のこと。
友だちのY君が
「あ!スエちゃん、今日はいつにも増してメデューサしとるね!ファミコンの悪魔城ドラキュラに出れるんじゃない?ウヒャヒャヒャ!」
と私の天然パーマを、からかってきた。
いつもなら私も
「何じゃと~!ワシの目を見ろ!石にしたる~!」
などと言って、他愛もないジャレ合いを始めるのだが、この日は状況が違った。
周りにいた女子のみなさんが爆笑したのである。
女子の嘲笑を受けること。
それは、すべての中2男子にとって世界の終わりを意味する。
私は「何もかも…この世のすべてを失った…」と絶望&逆上。
授業中、先生に当てられただけでガタガタ震えていたほど気の小さい私も、この時ばかりは、戦うことを決意。
折りよく砂場に突き刺さっていたバトンを手に。
そして、これまた折りよく近くに落ちていたのは犬のフン。
戦いの神の贈り物を、聖剣エクスカリバーの先に、ヌッチョリと塗布。
猛毒属性をプラスセットされたアルティメットウェポンを天高くかかげ、Y君を追い回してやった。
Y君は、「そんなバトン、タッチしてなるものか!」と全力必死で、校庭中を逃走。
笑っていた女子のみなさんも普段おとなしい私の鬼気迫る姿に恐れをなしたらしい。
それこそ、メドゥーサにニラまれ、石像と化した旅人のごとく硬直していた。
この世のすべてに勝った!
(おわり)