20代前半の頃。
パチンコ屋でバイトをしてたことがある。
私は、自分ではまったくパチンコをやらない。
一度「パチンコってどんなもんなのかな?」と2千円ぶんぐらいだけ試してみて、ジャンジャンバリバリ!
あっという間に飲まれて「なんじゃこりゃ。よくわからないな。」とやめてそれっきりだ。
人生でその一度しかやったことがない。
「短気」「すぐムキになる」「すぐヤケになる」「プライドが高い」「見栄っぱり」「そもそも貧乏」などなど…
この手のダメ人間はパチンコはもちろんギャンブル全般に向いてないと思う。
私はすべてに当てはまるキング・オブ・ダメ人間なのでハマって破滅するのが怖いから最初からやらない。やりたいとも思わない。ドラクエのカジノですら、何かイベントでもない限りスルーしがちである。グリンガムのムチなんか知らん。
面接の時に「自分ではまったくパチンコをやらないのですが、大丈夫でしょうか?」と聞くと「案外、そういうマジメな人のほうがいいんです。」と言って頂き、その時に描いていたマンガが「隣のお姉さんが電球を使ってオナニーしてて中で割れて救急車で運ばれちゃいました」という万一受賞しても完全に親に言えないタイプのエロスプラッターだったので、「マジメ」と言われ何だか詐欺師になった気分だったが採用されマンガは不採用だった。
パチンコ屋というと、グレーでちょっと怖いイメージがあるかもしれない。
私を雇ってくださった店も、根っこは地元の番長的な方が仕切る組織だったのかもしれないが、店長は大卒の礼儀をわきまえたお兄さんだったし、働いている人たちもみんな普通だった。
私のような何かを目指しているフリーター。
近所の大学生。
子供の学費のためパートで働いている主婦。
家族を守る父親。
ご夫婦で一緒に働いてる方もおり、時々、小さいかわいいお子さんたちを連れてきて、店員たちに大人気。キャッキャと遊んでもらっていた。
みんな普通だった。
パチンコ店員の花形と言えばやはり店内に景気よく響くあのマイクパフォーマンスだが、花が無い陰気な私はもちろん苦手であった。
ベテランの方のマイクアナウンスは、韻を踏んだり、時事ネタを盛り込んだり、練習を重ねたラッパーや芸人さんのマシンガントークのように見事なモノだが、私はもちろん全然できず「20番台のお客様…ラッキースタート…おめでとうございます…」と、必要最低限の伝達事項をお通夜に来た中森明菜の声量でキリコ・キュービィの口数でちょっとしゃべるだけだったので、熱いフィーバーに水をさしてしまい完全に向いてなかったが、特にとがめられはしなかった。
時給が確か1,200円ぐらいで、なかなか高く、シフトにも希望通り1日8時間、週5ぐらいで入れてもらえたので、普通に生活できた。
まかないがあり、食費も浮いた。
残業もなく、バイトが終わった後はマンガを描く時間を確保することができた。
嫌なこともたくさんあったし、嫌な人もいて、傷つき疲れることもあったが、まあそれはどんな職場に入っても同じようなもんである。
おおむね普通だった。
私はのび太の東大受験チャレンジぐらいなかなかバイトの面接に受からないので、あっさり採用して頂き助かった。
コロナ禍が吹き荒れる今「休業の要請に応じないパチンコ店の店名を公表する」という、2ちゃんのさらし行為もドン引きの呆れた蛮行が各都道府県のお偉い恥事たちによって、まるで当然のように行われてしまった。
公が発したこのイジメ指令によって湧いた自粛警察とかいう警察に自粛させて欲しい連中の嫌がらせや、世間の圧力を受け、パチンコ店が次々と閉店していった。
あの頃の自分が、もしもこの直撃を受けていたらどうなったろう?
やっと見つけた仕事を失い、補償もなく、貯金もない。田舎にも帰れない。
また一から仕事探し。
コンビニなどで求人誌を全種類ゲットし、めんどくさい履歴書を緊張でプルプル震えつつジットリ汗をかきながら書き、最後の自己PR欄の締めで書き間違えるという事故を起こし、四畳半の真ん中で天を仰いで奇声を上げなければならない。
そもそも募集してる仕事自体が少ない。
きっと面接にもなかなか受からない。
もし受かっても、最初の給料が出るのは先のこと…
生活苦、叶わぬ夢、タイムリミットのようにカウントされていく年齢…
破滅へのリーチがかかっていくのを感じ、きっと選択肢の一つに「自殺」が浮かび上がったと思う。
私だけでなく、私と同じように、バイトしながら何かを目指していたフリーターの子たちはどうなっただろう?
子供たちの学費のため、忙しい家事の合間をぬってパートをしていたお母さんたちはどうなっただろう?
あの仕事で家族を支えておられたお父さんたちはどうなっただろう?
一緒に働いていたご夫婦やあの小さなお子さんたちはどうなっただろう?
みんなどうなっただろう?
先日、広島県は、あるパチンコ店が休業の要請に応じないとして、店名を公表。「従業員や家族の命を守るためすみやかに休業に協力して欲しい」と改めて要請した。
店側は「休業を要請するなら補償をしてほしい。従業員の生活を守るため、これからも営業は続ける」と答えた。
私もそれでいいんじゃないかと思う。
国が用意した現在利用できる補償だけで生活が守れないのであれば、入場制限を設けて、間隔を空けて座って頂き、マスクの配布、消毒用アルコールの常備など、基本的なコロナ対策だけ万全にして、あとは営業を続けてもいいんじゃないかと思う。
先日、小林よしのり先生が「自粛なんかやめろ!」とゴーマンかましておられたが、私も過度な自粛ムードには疑問を感じる。
コロナよりも失業からの生活苦に追い詰められ、自殺で亡くなる方が増えるのではないか?
だいたいコロナだけでなく、人間が怖くなってきている。
満足な補償もせずにイジメを煽る汚い手口で自粛をせまる。
それにまんまと煽られて、日ごろのコンプレックスや不満を刃に変え、弱い立場の者に集団で攻撃を加える。
誹謗中傷、嫌がらせの電話、張り紙、他県ナンバー狩り。
ライフラインを守るため、必死で全国を走り回っておられるドライバーの皆さんやご家族へのイジメ。
戦争をしかけたり、人種差別をする恰好の口実となる陰謀論やデマの拡散。
もう完全に永井豪先生の『デビルマン』の世界である。
コロナよりも、こういったことをする人間たちのほうがよっぽど憎い。
いったい、このキチガイ群衆たちは、悪魔の攻撃を受けた人類が自らの心の弱さで自滅していく地獄絵図を描いた神の啓示のようなあの名作から、何を学んできたのか?
ナヌ⁉読んでないですと⁉
文部省のえらい人は早急に全国の小学校の図書館に『はだしのゲン』だけでなく『デビルマン』も置け!
(おわり)
※デビルマンはぜひ「キチガイ」をちゃんと「キチガイ」と書いてある、最初に出版されたバージョンで読みましょう!ぜひ!
…でも、だいぶ高くなってしまってますナ…うーん… ↓
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