また お前らかいっ!!

みなさんは人生の中で「また お前らかいっ!!」というツッコミを入れたことはおありだろうか?
「また お前らかいっ!!」という、激しく燃えるツッコミ。
私はある。

 

その昔、私は、某食品会社の工場で働いていた。
劣悪な環境での過酷な肉体労働。
あの地獄をどう伝えよう。
誰にでもわかるたとえで言うと、高橋葉介先生の名作マンガ「腸詰工場の少女」で薄幸のヒロイン那由子ちゃんが働いていたような、ドップリと黒い職場であった。

 

その日も私は、平成の蟹工船での仕事が終わってヘロヘロにくたびれ果てていた。
しかし、明日は休み。このまま何もせず寝てしまっては、あまりにもったいない。
酒とツマミをシッカリと買い込み、部屋で1人、映画を観ながら、心ゆくまで飲みまくるのだ。
それが、暗澹たる毎日の中で鬱積した心の澱みを洗い流す、自分にとってはずせない、週末の大切な儀式であった。

 

ビデオレンタル屋で「今夜の1本」を物色。
しかし、精神的にも疲弊していたので、あまり難しい作品は観たくない。
ここは1つ!気楽に何も考えずに楽しめる作品を!
そこで手にしたのは、ハリウッドのSF大作「トランスフォーマー」である。 ↓

 

コンボイさんたち

 

巨大ロボがウジャウジャ出てきて、ガチャガチャ変形して、ドカーンドカーン!わるいロボをやっつけろ!な映画だ。(たぶん)
監督はマイケル・ベイ。代表作は「アルマゲドン」「パールハーバー」など。
インテリジェントなシネフィルから常に総スカンを食らうステキな大味の持ち主。

 

ベイ映画なら大丈夫だろう。
小難しい話など、どうでもよろしい。
お金をタップリとかけて、最新のCGで描かれた美麗なタカラロボちゃんたちを、ただひたすらに、お腹いっぱい堪能しまくればよいのだ。

 

イソイソウヘヘと帰宅。風呂から上がり、酒とツマミをセット。
週末の熱いフェスの準備完了!
パシリ!と缶ビールをあけ、逃亡中の70年代の過激派の隠れ家みたいな薄暗い四畳半で1人「カンパーイ!」と職場では絶対に見せない満開の笑顔でシャウト。何かしら終末感がハンパない私。
しかし、来るべき恐るべき未来など知らん。
今はただ、豪華爆裂ベイ映画を見て、ボンヤリとした不安からは全力で目をそらせ!
ワクワクしながらDVD再生ボタンをオン!
戦え!超ロボット生命体!YOU CAN FIGHT! TRANSFORMER!

 

……が、何か違う……
最新のCGで描かれたカッチョイイ変形ロボがまったく登場しない。
出て来るのは絵心のない小学生がジャポニカ学習帳の端っこにグルグルと描いたようなヘボいロボ。
プレステ1ぐらいのCGで描かれたソイツらが、チョコッと出てきてチョコマカ動くのみ。
タップリと金を注ぎ込んだハリウッドSF超大作ではなく、ボンクラ大学生が「知り合いに出てもらって映画を撮ってみたぜ!イエーイ!」みたいなクオリティーなんである。

 

「なんか変だな…」と思い、再生をストップ。DVDを確認すると… ↓

 

途中までしか観ませんでした

 

トランスモーファー」…

 

しまった…
「ターミネーターズ」とか「エイリアンVSエイリアン」とか「パラノーマル・ビギニング」とか、タイトルやパッケージのデザインを本家と酷似させたヒット作便乗作品。
いくら疲れ果てていたとはいえ、まさか自分がこんな「柳の下のドジョウを狙え作戦」にまんまと引っかかるとは…

 

週に1度のお楽しみタイムをヘナチョコロボにコナゴナに粉砕され、犯行前夜の人みたいに呪いの言葉を1人ブツブツ口にしながら酒を飲みまくり、ぶっ倒れるように寝た。
薄れていく意識の中で、このモドキ映画を撮ったスタッフたちの笑い声を、確かに聞いたような気がした。

 

1週間後。
その日も私は仕事が終わってヘロヘロに疲れ果てていた。
しかし、明日は休み。
今日こそは、難しくないお気楽娯楽映画を観ながら、心ゆくまで酒を飲みまくるのだ。
ビデオレンタル屋で私がチョイスしたのはハリウッドの超大作「紀元前1万年」 ↓

 

大味も ここまで続けば 作家性

 

超むかしのカッチョイイ戦士や、美麗なCGで描かれたサーベルタイガーとかががウジャウジャ出てきてパオーン!パオーン!こわいマンモスやっつけろ!な映画だ(たぶん)
監督はローランド・エメリッヒ。
代表作は「インディペンス・デイ」「2012」など。
毎回、大金をドバドバ投入して作り上げた豪華最新CGをゲップが出るぐらいテンコ盛り。
その上に中学生が授業中に考えたような薄い人間ドラマをパラパラとふりかける、インテリジェントなシネフィルからは常に総スカンを食らうステキな大味の持ち主。

 

エメリッヒ映画なら間違いないだろう。
小難しい映画なんぞ、クソ食らえだ!
今夜は、単純明快SFX超大作!めくるめく太古の世界へワクワクタイムスリップ!
DVDのケースに手をのばした、その瞬間。
何か…違和感!
電光走る!
ケースをよく見ると ↓

アサイラムのステキなお仕事

 

「紀元前1万年」じゃない。
紀元前1億年
そして、ケースをひっくり返すと ↓

そもそも、モーファーって何だよ
またお前らか…

 

「脅威のメガヒット『トランスモーファー』のスタッフが放つアクション・アドベンチャー超・大・作」 ↓

 

だまされやす過ぎる男の叫び

(おわり)

 

全然すすめん。

 

 

 

全然すすめん。