目に入った虫を取る知恵

筒井康隆さんの「わかもとの知恵」という本をご存じだろうか?

「出そうなくしゃみを止める知恵」
「乾電池が切れたときの知恵」
「犬にほえられたときの知恵」
「坂道や階段を楽にあがる知恵」
「相手の名前が思いだせない時の知恵」

などなど…
知っていれば生活に役に立つ裏ワザ的な知恵を集めた本だ。

 

 

元ネタは、「錠剤わかもと」の付録だった「重宝秘訣絵本」という、戦時中の子供向けの知恵本。
筒井さんが、この中から現代の子供にも役立つモノをピックアップ。
他の裏ワザ本や、筒井さんご自身が経験の中から生み出した俺ジナルの知恵も追加。
そのひとつひとつに、きたやまようこさんの最高にかわいいイラストをセット。
お子さんがいらっしゃるご家庭にはもちろん、お子さんどころかお嫁さんもいらっしゃらない私にも、本棚に1冊あるとたいへん心強い、凄カワイイ本である。

 

この本を読んでいて思い出した。
私もひとつ、生活に役立つ裏ワザ的な知恵を持っていることを。
それは、手や水などを使わずに「目に入った虫を取る知恵」である。

 

みなさんも、ちっちゃい羽虫とかが目の中に入って困ったことがあるだろう。
なんかゴロゴロして痛いし、病気になるんじゃないかと怖いし。
こういう場合、鏡の前でアカンベーして、目の中を探して、綿棒で取ったり、水で洗い流したりしたと思う。

 

しかし、いつでもそれができるとは限らない。
遅刻ギリギリで、自転車で爆走中のOLさんの目玉に、ちっちゃい虫が突入!
こんな場合、どこか鏡や水のあるとこに立ち寄って、取ってるヒマはない。
ベータのビデオ版しか出てないSFホラー映画のヒロインみたいに、目玉に虫を宿したまま、痛みと不安に耐え爆走してるうちに、だんだん会社も人生も地球も何もかもどうでもよくなってきて
「目に謎の小虫が入ったので今日は会社休みます…」
と、上司を複雑な顔にさせる欠勤理由を電話で告げることになるのは、火を見るより明らかだ。

 

そんな時、私がお伝えする知恵を使えば、問題は解決である。チャリ爆走しつつ虫取れる。
「わかもとの知恵」にならい、イラスト付きで説明させて頂く。↓

 

目に入った虫を取る知恵

 

私はこの方法を、はるか昔、子供の頃、「フィリックスガム」をなぜか「のらくろガム」と呼んでた頃、誰かから教わり、半信半疑で試してみた。
するとバッチリ効いてビックリ!
それ以来、目に何か入るたび、この秘技をグリグリ発動!痛みやゴロゴロは魔法みたいにスーっと消えてなくなるのであった。

 

しかし今まで私の目に果敢に飛び込んできた大量の虫やゴミは、いったいどこへ消えたのであろうか?
どう考えても外に出てないし。
ほっぺをグリグリする舌の動きが、失われし古代魔術の秘密図形を描き、眼球の裏に亜空間への門が発生、その中へと吸い込まれていったのであろうか?
それとも、体内のどこかに蓄積され、おぞましき合体、変容を繰り返し、いつの日か名状しがたい恐るべき怪物に成長を遂げ、お尻からウンチまみれで飛び出してきて私を食い殺すのであろうか?こんなことばかり言ってるからお嫁さんがいないのであろうか?

 

私は孤独を愛する人間なので、お嫁さんがいなかろうがどうでもいいが、そんなことはともかく、紹介させて頂いたこの知恵、ネットで検索してものってないんである。
なぜだ!?
誰かしら、この方法を知ってる人がいてもおかしくないハズなのに。
ひょっとして、効いたと思ったのは私のカン違いで、まったくのインチキなのだろうか?
「目に入った虫を取る知恵」と言いつつ、そもそも取れてないような気もするし。
そういえば、ここ数年は目に何か入ることも無く、この秘技を使っていない。
しかし、以前は確かに、何度も効いていたと思うのだが……

 

どうしよう?
目にちっちゃいゴミや小虫を入れて、今一度試してみるべきであろうか?
しかし、己の説を証明すべく、眼球に消しゴムかすを投入したり、カッと目を見開いたまま、ミクロイドSもビックリの巨大蚊柱に自転車でワーッ!と叫びながら突入するというのは、目も痛いし、人間的にも痛いのではないだろうか?
それとも大学病院の眼科研究室に電話して「目にガガンボとかが入って痛い時、反対がわのホッペを舌でグリグリすると治ると思うんですがどうスかー?どうスかー?」と聞いてみたほうがいいのであろうか?
それともやはり信憑性に欠ける学説の発表は控え、代わりに「昔、下北沢の公衆トイレに入ったら、男性用小便器にお尻を向け、守備を固める内野手みたいな前傾姿勢でウンチをしているオジサンに遭遇してドギモを抜かれた話」にしたほうがいいのであろうか?こんなことばかり言ってるからお嫁さんがいないのであろうか?
(おわり)