先日のこと。
昼飯の茶漬けに入れる高菜とアラレを買いに近所のスーパーへ。
すると店舗の一角に小さな笹の木が。
そばにはテーブル。その上には色とりどりの短冊の束。
なるほど、そろそろ七夕。
ママと一緒に来店したチビちゃんたちが、この短冊に願い事を書き、笹に取り付けるという寸法だ。
スーパーの小粋なホッコリ企画である。
見ると、可愛い字で願い事が書かれた短冊が、すでにたくさんぶら下がっている。
思えばこういった七夕イベントは、私が、スケールのでかすぎる遠恋の彦星と織姫が久々に会ってナニをするのかなんて全然考えもしない清らかなるハミチンぼうずだった頃にも、小学校なんかで行われていた。
友だちのS君が「ニュータイプになれますように」と書いているのを鼻で笑いつつ、「セイラさんとけっこんできますように」と力強く書きこんだものである。
ミライさんとドッチがいいか悩んだ。真剣に。
でもあの地味なオバチャンはなぜか男関係が派手なのでセイラさんにした。
今の子供たちはいったい、どんな願い事を書いているのだろう?
オーソドックスに「パイロットになれますように」とか「やきゅうせんしゅになれますように」かな?
それとも錦織選手の影響で「テニスプレイヤーになれますように」かな?
「ワンピース」がギネス級の超人気だから「海ぞく王になれますように」かな?
女の子だったら「プリキュア」かな?
可愛い孫を見つめるオジイチャンのホッソリ目で笹に歩み寄り短冊に目を向けた。
…うん、欲しいのはわかるけど何かもっとこう…
一応、七夕なんだから、こういう晩飯食いながらオカンにねだれそうなのじゃなくて、もっとお星様キラキラな夢のある願い事は…
………
どうした子供たち。
そんなにマネーが欲しいか?君たちはハマショーなのか?
ルフィは?キュアトゥインクルは?
ああ、子供たちよ。
お金は大事だ。それはわかる。痛いほどに。
でも、どうかせめて今だけは。
君たちが子供でいられる今だけは、お金なんかじゃ買えない美しい夢を見ておくれ。
ボクはたぶん君たちのお父さんぐらいの年だけれどもね。残念だけど、大人になったら見ることができるのは現実だけ。夢はもう見れなくなってしまうんだ。
ボクも昔は子供だった。あの頃、小さな手で、幼い字で、真剣に短冊に書きこんだ可愛い夢はもう二度と見ることができない。
夢を見る力は、子供の時にだけ使える、はかなくも美しい魔法なんだ。
だから、ああ、子供たちよ。どうかせめて今だけは。
お金なんかじゃ買えない、ウンザリするような現実に縛られない、大きな夢をその小さな胸に抱き、空高く天の川まで舞い上がり、星に願いを届けよう。
この銀河に生まれた愛しい小さな魂たちよ…