私はものすごい汗っかきだ。
ちょっと運動しただけでピンチの時のカイジと同じぐらいダラダラと大量の汗が吹き出す。異常な発汗に、周りの人がざわ…ざわ…するほどだ。
そんな私が以前、ジムに通っていた頃のこと。
筋トレとかすると床が幽霊が座った後のタクシーの座席みたいに汗でビショビショになってしまい、いつもモップでふいていた。
ある日、自分が作ったこの汗だまりでツルッと自すべり、前のめりに転倒。
倒れ込んだ先には、寝ころんでストレッチしてたキレイなお姉さん。
ドンッ!と両手、両膝を床につき、ちょうど服を着たままのシックスナインのように、お姉さんの顔面の上にまたがる形になってしまった。
ちょっと向きを間違えてより大胆になった「床ドン」…ならぬ「金ドン」である。
そしてそれ以来、そのお姉さんはサンドバッグなどを打っていて私が横に来ると、そそくさと二つぐらい隣のサンドバッグに移り、何か思い詰めた表情で一心不乱にキレのいいパンチを打ち込むのであった。
「女性誌などでよく書かれている通り、壁ドンや床ドンや金ドンは、女の子をドキリと意識させてしまうんだなあ。照れて立ち去るほどに!」と強く思った。
そんなキチガイが先日ネットをダラダラ見てたら、壁ドン、床ドン、金ドンなどとは逆に「男性をドキリとさせる女性のしぐさ・ふるまい」的な特集を組んだ記事があった。
そこには「上目づかいで頼みごとをしてくるしぐさ」とか「暑くてトップスをパタパタさせるしぐさ」とか、けしからんしぐさがランキング形式で並んでおり、私もウムウムと深くうなずきながら読んだ。
しかし一つ。
凄まじい破壊力を持つ必殺のモテしぐさが、その記事には抜けてしまっていると思った。
それはズバリ!
「男の後ろから、裾(すそ)をツン!とつまんで引きとめるしぐさ」である!
絶対にこれを抜かすわけにはいかん!
「壁ドン」「床ドン」や、シン・ゴジの「水ドン」のように、この女性のしぐさにも、女性誌や少女マンガの作中などで、すでに名称がつけられているのだろうか?
少女マンガは「ときめきトゥナイト」でときめいて以来読んでない現代のエトランゼなのでわからない。
ここでは便宜上このしぐさを、裾をツンとつまむことから「裾ツン」と呼ばせて頂く。
この「裾ツン」には様々なパターンが考えられる。
仕事をバリバリこなすOLさんとかが、男とすれ違った瞬間に用事を思い出し、ツン!と裾をつまんで引き止めるのもイイ。
また、ちょっと内気な女の子が「この人と、もう少し一緒にいたい…」と思うも言い出せず、別れの時間が来て立ち去ろうと背を向けた男の裾を、意を決して恥じらいながらツン…とつまむのもイイ…
また、若い保母さんとかが、フリチンで走り回るヤンチャ坊主にパンツをはかせるべく「コレッ!待ちなさいッ!」という感じで「裾ツン」でつかまえるのもイイ!
私が今まで見た「裾ツン」の中で1番ドキッ!としたのは、高橋留美子先生の超名作、恋愛マンガの金字塔「めぞん一刻」の終盤に出てきた「裾ツン」である。 ↓(©高橋留美子先生)
自分の気持ちには気づいているのに素直になれない響子さん。
そんな中、起こった五代くんの浮気疑惑。
何とか疑いを解いた五代くんが立ち去ろうとしたその時…に炸裂した響子さんの「裾ツン」である!場所はラブホテル前!この後の衝撃の展開ときたら!
昔、私の友人が部屋に来て「めぞん一刻」をガッツリ1巻から読み始め、このシーンで「ああ~っ!ついに響子さんと五代くんがラブホテルに行っちゃったよ~っ!」と雄叫びを上げながら転げまわっていた。
この「裾ツン」。
なぜ先ほどのネットの記事のランキングには入っていないのか?ときめくのはワシだけなのか?
疑問に思い、周辺の男性たちに大規模なリサーチを開始。
まずは近くから。
先ほど「めぞん一刻」で雄叫びを上げた友人。34歳、独身のアイアン・チェリー。信頼できる身持ちが固い男だ。
彼に前述の様々な裾ツンのシチュエーションを話し、どう思うか聞いてみたところ、顔を赤らめ、鼻の穴を広げ、転げまわりながら「イイ!イイ!それはイイー!!」と魂のシャウト。興奮しすぎてついちょっとしゃべってしまったショッカーの戦闘員みたいになっており、まあまあ不気味で今年も彼女できなそうで気の毒であった。
これで私と友人の2人が「裾ツン」イイ派。
リサーチした男性2人のうち2人。つまり100%。
このことから地球上のすべての男が「裾ツンで胸キュン」ということが証明されたと言えるだろう。
気になる人がいる女性の方は、あなたに想われているその幸福な男に、この「裾ツン」をチョイチョイかましてみることをオススメする。
きっと体も心もグイッと引き寄せることができるだろう!
もっと男に裾ツンを!
ちなみに私の裾は365日、24時間いつでも空いている!
さらにちなみにつまむのは裾でも袖でも肉でもなんでもイイ!つまんでくれるならもう何でもイイ!イイ!それはイイー!!
(おわり)