父よ…

アメを噛んだら奥歯が砕けた!
欠けて鋭利にとがってしまった歯が、口を動かすたびに舌や口内をザクザク傷つける。仕事の業務連絡などをするだけで試合後のボクサーみたいに口内がズタズタに。
出血を防ぐためなるべく口先だけでホゴホゴゆっくりしゃべるようにしてたら背後で「田中邦衛…」「クスクス…」と女子の声聞こえ、心が出血したので歯医者に行くことにした。

同居している74歳の父にその旨をホゴホゴ告げると
「ならワシがこないだ虫歯を治して入れ歯も新調した歯医者へ行くとええ。先生がやわらこうてのう。ええ歯医者じゃったけえ。」
と新調した入れ歯の口で息子よりよっぽどハッキリ発言。

医者の物腰とお年寄りごはんはやわらかいに限る。
特に医者は物腰やわらかくないとダメ。
患者に対して高圧的に怒鳴り散らすようなヤクザ医者だったら、何か細かな不安があっても怖くてとても聞けない。奥歯を一本治してほしいだけなのにアウトレイジ流の歯茎グリグリドリル治療をまんべんなくほどこされ、何も言えない。
なので、父イチ推しのそのやわらか歯医者へ。

新しくきれいなたたずまい。
しかし入ると違和感。何かが変。
やがて気づいた。
働いてる女性たちが、受付から何から皆さんなぜか全員若くてカワイイのである。
病院のホームページには、眼鏡をかけてポッチャリした秋元康似の院長の写真が載っていた。あの人の趣味が反映されたオーディション結果としか思えない美人密度の高さである。
風俗の待合室みたいに名を呼ばれ治療ブースに入ると、やってきたのは院長じゃなくて女性医師。そう!もちろん美人。控え目に言って白衣を着せた篠田麻里子似。エロプロデューサーは休みなのかこちらの嬢が自分の担当になるらしい。

職場で乱闘があり止めに入ったらいいのを一発アゴにもらってしまって…と奥歯が砕けた理由を話し、治療を受けるべく口を開け、目を閉じていると、何か右頬のあたりにムニュッとやわらかく暖かな感触が。
「こ…この感触はまさか…!?」
そう!それはまごうかたなきO・P・P・A・I!オッパイ!
一心不乱に奥歯をドリルでガリガリ削る美人女性医のオッパイが私の頬に思いっきりムニュッと当たっているのである。

けしからん。治療に集中していて気づかないのかもしれないが破廉恥きわまりないではないか。
これは勘違いなさっている女性もいるかもしれないが、世の中にはいくら相手が若い女性であっても、他者と肉体的に触れ合うということに非常にストレスを感じる男性もいるのである。何の気もなくボディタッチなどをしてしまう女性は少し思い直したほうがいいかもしれない。
いや…!しかし今回の場合は、これはもしかするとワザとか?あのエロプロデューサーの指示か?
そうだ!きっと集めたタレントにこうやって胸枕営業を指示、患者を篭絡&獲得しているに違いない。
医療界も堕ちたものだ。白衣の天使ならぬ白衣の堕天使よ。世のすべての男がこんなことでまんまと喜び誘惑されると思ったら大間違いである。

正義感で憤る私への治療の内容は「砕けた奥歯の中が腐ってもう神経もすでに死んでいる。悪いところを全部削り、薬を塗り、今日はとりあえず仮の詰め物をしておきます。」というものであった。
長い歯科医プレイを終え、オッパイパブを後に。
ところが帰り道ですぐに、その仮の詰め物とやらがあっさりポロリと取れてしまい、奥歯に開いたクレーターのごとき大穴がむきだしに。
しかも、削りすぎてクレーターの淵がムチャクチャうすくなっており、噛み合わせただけで大切な奥歯がバキバキと砕けてしまうという悪夢のようなことになってしまった。

砕けた奥歯のカケラをペッペッと道端に吐き捨て帰宅。さんざんな治療結果を台所にいた父に報告。「どこがええ医者なんね!ありゃヤブ医者よ!」と問いつめると
「ほうかのう…やわらこうて…ええ先生じゃったがのう…」と父。
そこではたと気づいた。まさかやわらかいって……

父よ…
(おわり)

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