令和になった今でも昭和の時と同じく、私はアナログでマンガを描いている。
人物を描くのはタミヤの面相筆。背景などはタチカワの丸ペン。
そして、インクとして使っているのは開明墨汁。
口が大きいのでペン先をつけやすい。
シッカリと漆黒。
下書きの線を消す時に消しゴムをかけても薄くならない。
墨の香りもなんかなごむ。
色んなインクを試したが、やはりコレが一番気に入っている。
しかし…
これは開明墨汁だけでなく、すべてのインク瓶にたいていは言えることだと思うが、残量がわかりにくい。
それと、容器の底が平らなのでインクが残りわずかになるとペン先をつけにくい。
なのでいつも最後までキッチリ使い切ることなく、新しいモノに取り替えていた。
何となく不便を感じつつも、特に工夫をすることもなく、残りわずかなインク瓶にペンを突っ込んでは、フチでペンや指を真っ黒に汚し、拭きとっては別の指や原稿などを汚し、ベトベトインクまみれで「うげっ!うげげっ!」とパープルヘイズみたいに狂乱状態になり、最終的に原稿を投げだし、フテ寝してジョジョを1巻から読み返したりしていた頃、ネットであるモノを目にした。
発表された当時、SNSなどでもかなり話題になったので、ご覧になったことのある方もおられるだろう。
「底が円錐形になっているので最後までインクが使える!」
「ガラス製なので残量もわかりやすい!」
他にも従来のインク瓶の問題点を徹底的に解消する工夫が凝らされているらしい。
「あるといいな」がある!ここに!これは…ワシが心のどこかで夢見てたヤツじゃああ!
…と、テンション爆アガりしたのも束の間、ホームページを見てショボン。
いや、製品はもちろん素晴らしい。まさに究極。アルティメット・インク瓶である。
ただ…
老いた時の生活に困らぬためのはずの厚生年金およびその他モロモロで給料から毎月3万円以上も容赦なく天引きされ、今、飢え死にしそうになっているプロ赤貧の私には、この素晴らしいアルティメット・インク瓶、お値段のほうもちょっとアルティメット…
買ってしまえば一生モノだから良いのだが、その時の私にはとても手が出なかった。そしてそう!もちろん今もだ!
あの時からいつも心のどこかで「あのインク瓶の代わりに使えるような、何か安い円錐形の容器はないかのう…」と考えるようになった。
しかし、街をブラブラした時のついでに、ちょいと食品コーナーとか容器的なモノが置いてありそうな店をのぞくのだが、なかなかイイ感じのモノはない。
底が円錐形の容器というと、もうパフェとかかき氷のグラスぐらいしか思い浮かばない。でも、それを作業机の上に置いてマンガを描くのは何かがちょっと違う気がする…
そんなことを考え続けながら生きていると、先日、ブラブラしてた東急ハンズで、こんなモノが目に飛び込んできた。
エスプレッソ用のショットグラス。
「こ…これは…まごうかたなき円錐形!しかもガラス製で透明!大きさもイイ感じのインク瓶サイズ!しかし…何かフタ的なものは…」
と、興奮して店内をウロウロしていると、続いてこんなモノが目に飛び込んできた。
直径5センチ、厚さ1センチの円形のゴム板。
ちょっとはめてみると、まるでこのために作られたかのようにピッタリ!さっそくゲット!合わせてたったの1,098円なり!
ワクワク家に帰り、テストしてみたところ、なかなかイイ感じである。
円錐だからラストの一滴までむさぼり使い尽くせる。ガラスで透明だから残量もわかりやすい。
フタを閉めようとすると、圧縮された空気にキュポン!と押し上げられてしまうこともあるので、一度「グッ!」と閉めて、端っこを少しだけめくり、空気を「プシュッ!」と少し抜いてから、また閉めると良い。
さすがにラグビーボールみたいにポーンと投げ渡したりは怖くてできないが、逆さにしても漏れなかったので一応、密閉はされていると思う。
スポイトや注射器でこの容器に移し、小分けにして使っていけば、捨てることなく最後までインクを使い切ることができるだろう。
台形を逆さにしたようなフォルムなので、ちょっとバランス的に不安な気がしないでもないが全力で見なかったことにして、これからコレを使って全力でマンガ描くゾ!
(おわり)
※ゴムのほうはAmazonで見つけられませんでした。ごめんなさい。商品名は『CRゴム版 50Ø×10t』とレシートに記載あり。興味のある方は東急ハンズなどで店員さんに聞いてみて下さい。