ちょっと前のことになってしまうが「全国一斉!シン・ゴジラ発声可能上映」に行ってきた。
「声出し、サイリウムの持ち込み、コスプレOK!」で何やらワイワイ楽しそうなこのイベント。ワイドショーなどでも取り上げられており気になっていた。広島でもやってくれるとは思わなかった。バルト11さん、さすがイカす。
矢口蘭堂をイメージして青色っぽいスーツを着て行こうとも思ったのだが持っておらず、マイ一張羅である新宿の裏通りで時々死んでるドブネズミ色のスーツをセレクト。
しかし体が最終形態に進化して足も腹もボヨンボヨン。もうズボンが入らなくなっており、無理矢理インしたらスパッツみたいにピチピチ。
その上からギュッとベルトを締めたら大腸がちぎれそうになり断腸の思いで断念。ベルトをはずしバイ~ンと腹を解放。前をダラリと開けたままふと鏡を見たら矢口蘭堂じゃなくて逮捕3秒前の露出狂の変態中年が立っており「石原さとみに会えることは一生ない。何か世界が違う。」と当たり前のことをあらためて思った。
上記の理由によりノーコスプレ。普通の格好で出撃。ちなみに3回目の鑑賞。
道すがら
「東京と違い、地方はお客さんがおとなしいだろう…声出しもコスプレも照れて誰もやらず、あまり盛り上がらない寒イタいイベントになってしまうんじゃ…」
などと心配しながら劇場のロビーに入ると尾頭ヒロミさんがいっぱい立っていた。
カヨコ・アン・パターソンもいた。官邸のベテランお掃除おばさんもいた。迷彩服を着た自衛官もいっぱいいてコーラを飲んでおりバルト11のロビーが巨災対の休憩室になっていた。
「地方はおとなしい」など小心な私のアホな偏見で、みなさんステキにハジケまくっていた。「ロッキ・ーホラー・ショー」だけではなく「参加型上映」というものが、日本でも進化浸透しつつあることをまったく知らなかった。
個人的に文部科学省コスプレ大臣の座をさしあげたかったのは ↓
…という尾頭ヒロミさんの気合いの入ったコスプレをなさっていた方である。身のこなしも背筋ピーン!&キビキビとして尾頭さんっぽかった。シンゴジ女子、イカす。
上映が始まるとみなさんノリノリ。
客電が消え、スクリーンに東宝のロゴマークが新旧2種類続けて出るとこから
「東宝ー!」
「さらに東宝ー!」
と元気いっぱい発声!
学生時代、合唱祭とかで一生懸命ハイクオリティな口パクでしか参加できなかった小心なワシャびっくりである!みんな積極的ですごい!
その後もキャラクターが登場するたび拍手と歓声が上がり、その大きさが人気のバロメーターになっていた。
そして、日本のオール俳優総進撃とも言えるこの映画の超贅沢&多数の出演者の中、この日、広島の会場において一番の圧倒的な人気を獲得していたのは「蒲田くん」であったと思う。さすが!
賛否分かれてるらしいが私は断固としてアメリカ大統領に推すカヨコ・アン・パターソンが登場してカッチョよく英語を披露すると「イーオンの人だー!」と声がかかり場内爆笑。
また彼女が「祖母を不幸にした原爆を、3度もこの国に落とさせるわけにはいかない」と言い、原爆ドームの写真が映るシーンでは「ノー・モア・ヒロシマ!」の声が。これは広島の会場ならではのことだったかもしれない。
総理が「自衛隊の弾を国民に向けるわけにはいかん!」と攻撃中止命令を出すシーン、海外IT企業の女社長さんが「人間を信じましょう」と日本への協力を指示するシーンでは、たとえリスクを背負っても窮地に立たされている人を守ろうとするその選択に称賛の大拍手。
「やはり人の上に立つリーダーというのはこうであって欲しい。私も彼らを模範としよう。しかし人の上に立つ予定はまったくない。」と思った。
ところでこの上映会、発声の予習ができるようなテンプレ的なモノがあったのだろうか?観客の息がピッタリでビックリ。
柄本明演じる内閣官房長官が「みなさん至急、会議室へ!」と言うと、会場のみなさん素直な児童みたいに元気よく「は~い!」
また、塚本晋也監督演じる間教授が何かをひらめいて柏手を打つと、みなさんも同時に両手をパン!明るい炸裂音を会場に響かせていた。何でピッタリ?イカす。
「サイリウムはどう使うのかな?」と思ってたら普通に音楽に合わせてみなさん元気よく振っていた。無い人は手拍子。特にエヴァの音楽が流れるところでは大爆発!映画館がノリノリのライブ会場になっていた。
またラストの血液凝固剤ゴクゴクでは盛大な手拍子とイッキコール。ゴジラが一瞬、新歓コンパで飲まされすぎてグッタリしてるかわいそうな子に見えて気の毒でおかしかった。
これだけはしゃいでるみなさんも、例の熱線発射&東京が火の海のシーンでは、水を打ったように静まりかえり、固唾を飲んでスクリーンに見入っていたのが印象的だった。あの恐ろしくも荘厳な地獄風景が持つ凄みをあらためて感じた。
本編が終わると舞台挨拶の生中継。
泉ちゃん役の松尾諭さんがまず登壇。
熱狂する会場に向かって「まずは君たちが落ち着け!」と必殺のセリフをシャウト。
このサービスに当然会場はさらにヒートアップ。歓声がやまず、たまらず松尾さん「ま…まずは俺が落ち着けっ!」と言い放ち会場を笑いで包む。
続いて庵野監督、市川実日子さん、高橋一生さんが登壇。
市川さんはみんな大好き尾頭ヒロミちゃんと同じ服である。
「カワイイ!」の声に照れっぱなし。華奢でスラリと長く美しい手足を、困ったようにモジモジとクネらせ、マイクを横にして目かくししたり、庵野監督の後ろに隠れようとしたりしてる姿はホントーに可愛いくてキュン死するかと思った。
安田役の高橋一生さんは「わああ~っ!」と劇中のうろたえるシーンを再現しつつ登壇し、みんな大喜び。
会場の熱狂っぷりに、市川さんと瞬間、心、重ねて
「この熱気…まさか核分裂?」
「冗談ポイですよ尾頭さん」
とシンクロ率100パーセントの粋なユニゾン・アタック。さらにみんなを沸かせる。何というステキなサービス精神。
「やはりスポットライトを浴びる人というのはこうでなくてはならない。私もこの人たちを模範としよう。しかしスポットライトを浴びる予定はまったくない。」と思った。
気さくで場をなごませるサンナギっぷりで松尾さんがおもしろトークを仕切る中、突然
「ここにいない者をあてにするなあっ!!」
のセリフが会場に響く。どよめくみんな。
そしていきなり客席のほうから矢口蘭堂役の長谷川博己さんが登場!場内騒然!
ステージに上がり、あぜんとしている泉ちゃんに近ずき
「まずは君が落ち着け!」
と逆水ドン!腐女子じゃない私も悶絶しそうになった。
ちなみにこのほのかに漂うBL臭について庵野さんは
「矢口と志村はちょっと狙ったとこもある。でもまさか泉とくっつくとは…想定外でした。」
とのこと。この映画は本当に男たちが色っぽかった。
また続編の可能性について聞かれると
「僕が決めることじゃないから。東宝さんが決めることなんで。」
と言っておられた。
パンフレットに書いてあった通り「一度きりの挑戦」で、庵野さんはおそらくもうやらないのだろう。
しかしこの超特大ヒット。今夏のシネマ大戦はシン・ゴジ無双が吹き荒れる結果となった。東宝さんは当然、次もやりたいはず。
…となると誰が監督をするのだろう?
庵野さんに匹敵するような巨大な特撮愛を持っている必要があるだろう…
とすると…
…
特に浮かばん!
あっ!有識者の一人としてプチ名演を披露なさっていた原一男監督!「ゆきゆきてシンゴジ」!
もしくは、今や色んな映画・ドラマでひっぱりだこ、本作でも何気に超目立っておられた名優塚本晋也監督!ゴジラの皮膚がだんだん鉄に変化してメカゴジラ!ちんちんドリルもギュルギュル飛び出してまさかのR指定!
みなさんは誰に監督をしてもらいたいとお考えだろうか?
それはともかく、パンフレットに「エヴァQ公開後、心が壊れ、自分が代表を努めるスタジオに近づくことさえできなかった。」と書いておられた庵野さんから
「みなさん今日はありがとう。エヴァがんばります…っていうか、もうがんばってます。」
と、ネルフに戻ったシンジ君みたいに、エヴァの制作に戻っていることの嬉しい報告を聞くことができ、「大丈夫、いくらでも待つ。問題ない」とゲンドウみたいなことを威張って思った。
ところで先日、宇多丸さんが「HiGH&LOW THE MOVIE 応援上映」に参加した時の衝撃の楽しさをラジオで熱く語っておられたが、私もこの日の「シン・ゴジラ発声可能上映」、凄まじい衝撃であった。これほど盛り上がるものだとは!全然知らなんだ!
小心な私は拍手、手拍子ぐらいしかできなかったがそれでも楽しかった。
映画館に人を呼ぶ手段として、このような参加型上映は非常に効果的だろう。これからも色んな映画館が色んな作品で試してくれるといいのにな!と思った。「鉄男 発声可能上映」とか!「男たちの挽歌 発声可能上映」とか!
「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか 発声可能上映」なんて、ミンメイと一緒に大合唱で楽しいんじゃなかろうか?ワクワク!
ちなみに今回、広島の会場では舞台挨拶の中継に画面がなかなかつながらず、スクリーンがしばし真っ暗なまま、観客がザワザワし始めた。
するとすかさず
「テレビつけてっ!」
と劇中の柄本明さんのセリフを引用した声かけをした女性がおり、みんな爆笑。粋な発声に拍手喝采。
無事に中継もつながり、ニコニコムードで舞台挨拶の運びとなったのであった。
参加したお互いを讃え、作品に熱い声援を贈り、俺ジナル応援うちわや水ボトルなど劇中アイテムを夜なべで制作。登場キャラはもちろん、まさかの無人在来線爆弾やコピー機など予想外の角度から攻めたコスプレで参加。
そんなみんながワイワイニッコニコで記念撮影をしていた。
「この国はまだまだやれる。」
そう感じた。
※ビックリ演出満載だった4DX版の鑑賞レポートはこちら ↓