年末なので今年もやる!そう!「映画ベスト10」を!
…と言いつつ今年はあんまり映画を観れなかった。40本ぐらい。
「散歩する侵略者」「美しい星」「無限の住人」「お嬢さん」などなど…楽しみにしていたのに見逃してしまった作品も多い。
ちなみに手塚治虫先生は、多くの連載を抱えるあの超多忙スケジュールの中、年間300本ぐらい映画をご覧になっていたそうである。貪欲に多くのものを吸収し、マンガ創作の糧とするためであろう。
それにくらべて、くらべるのもおこがましいが、私はいったい何をしているのであろうか。
先日も夕暮れ時、近所の干潟で、またたく星々のようにチラチラと見え隠れする大量のカニのハサミをボーッと見つめていた。
そんな私を通りかかった見知らぬバアサンがボーッと見つめていた。
やがて日が落ち「冷えるのう…ぬくい甘酒でも買うか…」と帰ろうとした私とすれ違う刹那バアサンは「まあ…まだ若いんじゃけえ…」とボソッと言うのだった。入水だと思われたのかもしれない。ちなみにこのボンヤリエピソードが何かマンガ創作の糧となったことはもちろんない。
2017年度の映画 個人的なベスト10
※「今年公開された作品」ではなく「今年映画館で観た作品」のランキングです
第10位 新感染 ファイナル・エクスプレス
走るゾンビは好きじゃない。
本作のゾンビはアスリートばりに元気いっぱい激走する上、ちょっと噛むだけ。生きながらキモをすすられる恐怖もまったく感じない。人間がゆがんでるので涙のカツアゲ的父娘ドラマにもあんまり感動しない。
しかしこれは気持ち悪い私の好みの問題であり、本作が気合の入ったゾンビ映画であることは間違いない。
第9位 牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件
VHSのビデオしか出てなかった伝説的名作の再上映とあってか横川シネマさん満員だった。
多くのかしこい評論家の皆さんなどが絶賛しているこの作品。映画史的にどこがそんなに凄いのか、無学でバカな私などには分かりかねるが、単純に異国の暗黒不良少年映画として面白かった。ハニーという番長のクールなバンカラ感が超カッコ良かった。
それにしても「誰が誰を殺すのか?」など、あらすじをまったく知らずに観て驚けて良かった。
ただ…長い!途中休憩もない!頻尿の私にはきつい!その時の私の魂のツイート。↓
「映画史に残る名作」と言われるような作品を観て「とてもすばらしかったです」など漠然とした感想をツイッターにあげるのではなく蓮見重彦さんも驚嘆のアカデミックな批評をしようと決意。しかし鑑賞直後の自分のメモ書きを見て絶望&断念。「牯嶺街少年殺人事件」とてもすばらしかったです… pic.twitter.com/doEVHBgijc
— 倉井スエ (@KuraiSue) 2017年5月9日
第8位 奇形女
やっぱり終わらなかったどころか「全国数か所で!しかもそれぞれ趣向を変えて開催!」というシン・ゴジラ級にビックリたまげた進化を遂げて列島横断、暴れまくったカナザワ映画祭。
わびしい収入と厳しいスケジュールの中、どの開催地に参戦しようかと検討。倉井のクはクッチャメチャのクの字なので、一番クロンボ度&キチガイ度が高そうな気がした「小倉」に決定!ウラウラベッカンコ!
この「奇形女」はそこで観た。
わびしいやせた街で働くちょうどいいブス加減のウェイトレス。
上昇志向の強い彼女は地元のサーカスの主催者をまんまとコマし玉の輿。サーカスを乗っ取るが、暴君ぶりに憤慨したフリークスたちに襲われ…という話。
一番笑われたくない「ある人物」のメガ嘲笑で映画は終わる。あそこまで後味の悪い結末も珍しい。すがすがしいぐらいだった。
それにしてもこんな映画がこの世に存在することをまったく知らなかった。小倉まで行った甲斐があった。会場となった小倉昭和館も昭和感満点でうれし懐かしすばらしかった。
第7位 ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章
色々言われたみたいだけど私はかなり面白かった。「けっこう当たりの時の三池さんだ」と思った。
ちょっと長い気もするが、豪華コスプレ大会をストレートに堂々とやりきっていて立派。楽しかった。
カツーンカツーンと靴音を響かせて登場する仗助を観て「山崎賢人くんってカッコいいんだな」と思った。あの若さでなぜか妖艶な色気がハンパない小松菜奈たんもやっぱり良かった。
興行収入が悪かったので続編の製作が危ぶまれているらしいが続きが観たい。ダイヤモンドは砕けないで欲しい。
第6位 チョコレート・デリンジャー
映画秘宝などでその存在はもちろんずっと知りつつも、完成してるんだか、ホントに上映するんだか、何が何だかよくわからず、なかなか観ることのできなかった映画。
杉作J太郎さん主催の「センチメンタルコリーダ映画祭」でついにやっと観れて感無量。何が何だかよくわからなかった。しかしメチャクチャ面白可愛かった。
映画祭や作品の詳しい感想は別の記事で書いたので省かせて頂くが、ソフト化などされず、幻の作品のままであり続けるのも面白いかもと思った。
第5位 ハードコア
「一人称視点のみで映画を撮る」
誰もがチラッとは考えても、誰も成功させることはできなかったアイディア。
それをあるパンクバンドのフロントマンが、曲げずあきらめず、創意工夫をこらし、見事に成し遂げた。
過去のイジメのトラウマを克服すべく強大な敵に立ち向かうヘンリーの戦いは、困難な企画に挑む監督自身の戦いでもある。この反骨精神が作品にみなぎったパンクでロックな熱い映画。のれる人には最高にハイな体験となるだろう。
特にヘンリーが怒濤の皆殺し進撃をする中盤のシーンとエンディング。ものすごい高揚感。燃えた。拳をグッと堅く握った。好きなバンドのライブの時みたいに。
「映画は傷だらけの哀しい魂を持つ者だけが撮れるもの。ミュージシャンみたいなモテモテリア充に映画が撮れると思ったら大間違いだ!」などと妬んでいたが大間違いだった。
第4位 全員死刑
「孤高の遠吠」に燃えまくったので当然ノコノコ観に行ってまんまとぶっ殺われた。
アソコをアソコに重ねる1カット目から「やりよるわい!」とニヤリ!
毎熊克哉さん演じる兄・サトシが自分より立場の弱いマッチョとかコンビニ店員にネチネチからむとこが嫌な感じで超良かった。鳥居みゆきさんもゲロをビュービュー吐いてて可愛かった。「キチガイ」「白痴」「腐れ小人」など、テレビじゃ絶対流れないセリフがバンバン聞けたのも良かった。
あのエンドロールのラストは「監督の名前でエンドロールが止まる映画にロクなのはない」という趣旨の発言を以前しておられた宇多丸さんにケンカを売っていると思いツイート。するとSNSをフル活用しておられる小林勇貴監督がコメント付きでリツイート。ホントにそれだった。↓
ほんとにそれなんですよ。 https://t.co/s5rg37uRRg
— 『全員死刑』の小林勇貴 (@supertandem) 2017年11月18日
第3位 沈黙
私は「オールタイムベスト10」に「鉄男Ⅱ」を入れるほどの塚本晋也監督ファン。
「その塚本監督が役者としてスコセッシの映画に出る!」このことにまず大興奮!
監督として世界的名声を得ており、役者としても引く手あまたな現在の塚本監督の栄光に1ミリも貢献していない私も何だか誇らしい気分になった。
そして塚本監督が演じたモキチはとても印象に残る重要な役だった。讃美歌も素晴らしい美声だった。
作品自体も75歳にして衰えぬスコセッシ監督の恐るべきパワーを感じる恐るべき完成度。
霧の中から現れる生首に始まり、熱湯責め、水責め、火炙り、逆さ吊り…と容赦ない残虐シーンで信徒も観客も責め立てる。
観てる間ずっと「自分だったらどうするだろう…」と考えていた。上映後、お客さんもみんな沈黙していた。
第2位 アウトレイジ 最終章
斬新なエグい暴力描写がまったくなかったのはちょっと残念。
大友組長が再び動き出して最終的にウソみたいな大殺戮を繰り広げることになる動機もちょっと納得しかねる気がした。
でも基本的にやはり大好きだ。前作までのギラギラ感はなく、どこかモノ哀しい「おじいちゃんたちの挽歌」だった。
あまりにもたけしイズムなケジメをつけた大友組長や、辞表を提出する繁田刑事(松重豊)など…去って行った者たちにくらべて、生き残った悪人たちがまったく勝利者に見えない。自分が殺し合い騙し合いの無限地獄におり、その不幸に気づいてさえいない哀れな愚者に見えて良かった。
第1位 アシュラ
これを観てしまったらもう並みの暴力映画では満足できないイケない体にボコボコに変えられてしまった。「全員悪人」というキャッチコピーはこちらにこそふさわしい気もした。
弱者が容赦なくネチネチいたぶられる腐りきったヒエラルキーのどん底でもがくハン刑事(チョン・ウソン)。西島秀俊とトムクルーズを足してボコボコにぶん殴ったようなイケメンの彼が最後に見せるギリギリの男の意地に燃える!
クライマックスの葬儀場での戦い。敵味方善悪男女すべて死に絶えるまで繰り広げられるまさにアシュラ地獄。もの凄い合同葬だった。
10位 新感染 ファイナル・エクスプレス
9位 牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人 事件
8位 奇形女
7位 ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章
6位 チョコレートデリンジャー
5位 ハードコア
4位 全員死刑
3位 沈黙
2位 アウトレイジ 最終章
1位 アシュラ
以上が今年2017年、映画館で観た作品のベスト10である。
来年はがんばってもっとたくさん観よう。見知らぬバアサンに心配されぬよう干潟を見ずに映画を観よう。
それではみなさん、よいお年を!
(おわり)